台本に沿うか、沿わぬか、トーク番組 【MATSU氏@中国・台湾】

アドリブ
台湾と中国(大陸)の番組の違いを「野球」に例えてみたいと思う。 ストライクゾーン内だけで勝負するのが、中国。ボールゾーンも使い、様々な球を投げながらバッターに対峙するのが、台湾。 事前に準備されるトーク番組用の台本。台本にどこまで沿うか、中国と台湾では大きく違う。 中国の場合、脚本の流れに準じて進んでいく。司会者は、時に数分はあろうかという長ゼリフを完璧に覚え、ノーミスの一発で決めたりする。


(この技量はスタジオで見ていて「お見事!」と拍手を送りたくなる)一方、台湾では、簡単な台本があるにはあるが、あくまで話題の提供。実際の収録では、話がどんどん横道に逸れていく。アドリブで逸れることが面白さの醍醐味と見なされる。

台本の流れを崩しても・・・

では、中国の番組で台本の流れを崩すことは可能か・・・? 一般に、中国の番組で台本の流れを崩して自由に話を展開したとしても、表現の「規制」という大きな壁が待っている。編集でカットされ(取り除かれ)、「放送されない」というのがオチだ。結局はストライクゾーンの中だけでボールを投げ続けなければならない。そのため、数回の会議を抜けてきた台本の通りに進めておくことが「無難」である。

中国よりも規制の少ない台湾では、「いかにテーマから面白い話を展開させられるか」が、司会者やゲストの腕の見せどころとなる。知識量やアドリブ力が試されるところ。展開力が無いタレントは「面白くない」というマイナス評価を得る。時に、暴投に近いようなボール球を投げたり、超スローカーブを投じたりしながらボールカウントを作っていく。

中華圏の代表的な番組「康熙来了」

中国のテレビ番組制作者達に、「どの番組が好きか?」と聞くと、ほとんどが、台湾の「康熙来了」を挙げる。「康熙来了」は、蔡康永と小Sが司会を務めるトーク番組で、台湾テレビ番組の代表格だ。スタジオには多種多様な数人のゲストが登場。真剣な話から崩れた話まで、時に、「日本であれば、放送できないだろう。」という話で盛り上がる。ゲストが一言挟んだことで、話の流れが急に変わり、思わぬ方向へ進むこともしばしば。

では、中国テレビ制作陣が「康熙来了」同様のトーク番組を作れるか。もちろん、スタジオのセットや撮影手法は近づけられる。しかし、トークの内容は、そう簡単ではない・・・。中国の司会者、ゲスト達にトーク力やユーモアが無いわけではない。自由に話を進め、放送した場合に、『広電総局の規制』にかかるというリスクが存在するのだ。リスク回避。「康熙来了」「超級星期天」等、手本がありながら、やはりあと一歩のところで引かねばならない。中国と台湾、番組の距離感というのは、その「自由度」にある。

放送可能ラインでの自由自在

しかしここ数年、中国の番組が持つ雰囲気は変わってきた。理由は、「ストライクゾーン内だけで勝負できる司会者が台頭してきた。」ということにある。「快楽大本営」の何炅、「非誠勿擾」の孟非などがその例だ。「非誠勿擾」の熟練司会者・孟非などは、アドリブで話を展開しつつも、放送可能なラインの範囲内で出し入れする。スライダーやシュートをストライクゾーン内だけで投げ分ける岩隈久志のようなタイプか。 中国の番組のイメージと言えば、以前は、本格的な京劇や歌唱、相声などを紹介するような直球勝負の番組が多かった。それが、アドリブが効いた(キレのある変化球も投げる)司会者の登場によって、面白みの幅が広がった。

結果として「規制」に近い形

台湾のテレビ番組の自由度はどうか。規制は極めて少ない、と言いながらも、人気パロディ番組「全民最大党」では、日本の大地震直後、天皇皇后両陛下が被災者を見舞った様子をパロディ化したことで、日本や台湾のネットユーザーから非難を浴び、番組内で謝罪した。 全民最大党の得意技18番は、北朝鮮の金正日やテレビ局アナウンサー李春姫の模倣だが、金正日が他界した日も、パロディは行わなかった。これは、インターネットの普及によって、番組の映像がボーダレスで届いてしまうという現象に起因したものだ。ネットが普及していなければ日本にも(ほとんど)届いてなかっただろうし、動画共有サイトに保存的にアップロードされ、問題提起されることもなかっただろう。表現が規制を受けたわけではないが、善し悪しは別として、結果として「規制」に近い表現への圧力が働いた。一連の流れは、今後、台湾テレビ番組の自由度に大きな影響を与えることになるだろう。

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