キッチンに叩き付けられた肉団子 【MATSU氏@中国・台湾】

一流シェフが出る番組に、えっ!俺でいいの?

料理番組と言っても、大連での話は「食べる方」ではなく「作る方」の番組。「料理を作ることはできますか?」と依頼を受けてビックリした。「俺、作れたっけ?」・・・いや、作れないわけではないぞ。一品か二品くらいはできる(というか数年前に作ったことはあった)。大連テレビの「今天吃什么?」への番組出演、メールでのやり取りの中で「作れる料理のレシピ、材料を簡単に書いて送ってください」と言われ、数少ない料理の中から「ほうれん草カレー」の作り方を思い出し、送信。出演日時などを詰めながら、大連に向かった。
大連到着以降、夕方に放送されるその番組をホテルのテレビで見た。雰囲気は教育テレビの料理番組に近いか。男性司会者一人に、毎回、5つ星レストランのシェフを招いてシェフが料理の作り方を伝授する(というか、えっ、そこに俺が出ていいの!?みたいな)。

スーパーの袋を下げ大連をウロウロ

Market

さあ、あとは翌日の収録に備えるだけ!と思っているところに番組ディレクターから電話。
「食材を買ってくることはできますか?」
「えっ!」
私は台湾でも料理を作る方の番組には出たことがない。食材は出演者が自分で買うものなの?突然の電話だったが、そもそもレシピは渡しているし、大連のスーパーの場所が分からない。一旦は「番組スタッフで用意してもらえますか」と電話を切った。

Hotel

しかし、よく考えてみると「たとえレシピや材料の資料が渡っていると言っても作り方は自分しか知らないわけだし、一つでも食材が欠けていると料理そのものが作れなくなってしまう。ならば」とディレクターに電話をかけ、「自分で買って来ます」と伝えた。
ホテルのフロントに場所を聞き、外資系のスーパーに入る。必要なものは、ほうれん草、バター、牛乳、タマネギ、塩、コンソメ、カレーパウダー・・・。上6品はあっさり見つけることができたが、カレーパウダーが見つからない。買えるものだけまず買って、一旦ホテルに戻り(次のスーパーで万引きに間違えられても厄介なので)冷蔵庫に入れる。そして、また他のスーパーを探す。次に見つけたスーパーでもカレー固形ルー(日本のメーカーのもの)はあるのに、パウダーがない。仕方なく、固形ルーで代用することに。
実は、夕方、その番組を見ている時に、一つ感じることがあった。完成した後の料理を、出演者が食べないのだ。上沼さんの番組も郁恵さんの番組も、最後に料理を食べ、何らかの感想を言い、おさらいへと進んでいく。しかし、この番組は、料理ができた後、すぐおさらいへと進む。味は番組上、確かめない。尺(番組の時間)の問題なのか、感想は不要、との制作判断なのか。ともあれ、私が、「固形ルーの代用でいい」とあっさり諦めたのは、奥底には「どうせ食べないんだから大丈夫だろう」みたいな緩い考えがあった(番組を舐めているわけではなかったが、できる範囲でやろう、ということ)。

タマネギのみじん切りからボロが出る

Onion

キッチン専用のスタジオ。入ると、まず煙草のにおい。段取りをするスタッフ。ミキサーが必要だと伝えておいたが揃っていない。「なけりゃどうやって作る?」慌てて部屋の外に飛び出すスタッフ。スタジオは、大連テレビとは別の場所、大きなマンションの一室にあったが、その2階部分にはレストランが入居していた。ミキサーではなくジューサーを借りてきた。
準備も整い収録開始。カメラは2台、カメラマンも2人。まずはタマネギをみじん切り・・・。ほとんど料理をしたことがない私、それはそれはひどい切り方。通常は一流シェフが出演する番組。さすがに、主婦向けのまじめな番組(放送を見る限り、かなり真剣な番組)、このひどい切り方でよいのだろうか・・・。と、見るに見かねた司会者の一峰(イーフォン)。私に変わり、タマネギを切り始めた。さすが、うまいみじん切り(感心している場合ではない)。
「これくらいでいいですか?」と一峰。
「これくらいで」と私。(俺は、何をしにきているんだろうか)

ジューサーから漏れるほうれん草の汁

Juicer

そして、続いての工程。(タマネギさえ切ってしまえば、後は自分にとって難しいことはない)みじん切りにしたタマネギを、フライパンに入れ、弱火で30分〜40分、きつね色になるまで炒める・・・。いや、待てよ、30分以上、炒める・・・。(既に炒めてあるタマネギなどどこにもない)収録しつづけるのだろうか。(日本の番組では、事前に炒めていたタマネギを用意しておくが・・・)せっかちそうなスタッフ。まあ、数日間見た番組では、司会者は味も見てなかったし、いいか・・・数分炒めてヨシとする。
次は、湯で茹でたほうれん草をミキサーに入れ、ジューサーで撹拌(本当はミキサーが欲しかったが、私は料理のプロではないのでごねたりしない)。と、緑の汁がジューサーの隅々からこぼれ落ちているではないか。ハプニングに驚いていると、司会者の一峰がティッシュで、こぼれでた汁をサッと拭いて、何事もなかったような顔。こういうのでも成立するんだなぁ・・・。こぼれた分、ほうれん草の分量は減ってしまったが、もともとアバウトな料理、牛乳を足して、 量の帳尻は合った(むりやり)。カレーパウダーではなくカレー固形ルーしかなかったことで、本来出したかった緑色は少し茶色っぽくなったけど、なんとか出来上がった。

Curry

皿への盛りつけ、炊いた白米(レストランから拝借してきたのだろう)にカレーをかけ、さあ絵取り(商品カット撮影)と思っていると、「見栄えが足りない」とディレクターがカレーの横にケチャップを掛け始めた。

もういいや。番組として成立するんだったらそれで。
料理完成、と同時に収録終了。本当に誰も最後まで味見しなかった。

キッチンに叩き付けられた肉団子
製作スタッフや司会の一峰に昼食に誘われていたので、私は自分の収録が終わったあともスタジオに残り、別の女性シェフが作る回を見ていた。女性シェフが作る料理は「肉団子」。豚肉に調味料を加え、練りに練る。それをお湯に通す。次々と団子が仕上がっていく。トークしながら進行していく一峰。
すると、なんと!驚くべき光景が!
一峰、肉団子をパッと手で掴み、口に入れたのだ!(本来なら驚くところではないのだが、これまで番組を見ていて一切食べなかった司会者がいきなり食べたものだからビックリ・・・私の料理も食べなかったくせに)
「弾力がありますね・・・」
食べながら説明する一峰。
と二つ目の肉団子を取り、「弾力がこれくらいあるんですよ」と言いながら、さらに驚く光景。
なんと、肉団子をキッチンに叩きつけたのだ。
軽く跳ねる肉団子。目を疑った。
「結構、弾力があるでしょう」
これが中国式料理番組のスタンダードなのかと思い、女性シェフの顔を見ると、シェフも唖然として複雑な表情をしていた。お笑い番組ではない、何度も言うが、放送を見た限り、教育テレビ的、真剣な料理番組。もう一度、叩きつける一峰・・・。2、3回跳ねる肉団子。うん、弾力がよく伝わってくる。

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