ここはテレビ番組の工場だな! 【MATSU氏@中国・台湾】

湖南より湖南テレビ

湖南省長沙にピンと来ない人もいるかもしれない。実際、中国人の友人に「長沙はどんなところ?」と聞いても「分からない」「印象がない」と答えるのがほとんどだ。しかし、質問を変え「湖南テレビの番組は?」とすると、途端に、番組内容や司会者など会話が弾みだす。「湖南のことは知らなくても、湖南テレビのことはよく知っている」という中国人は多い。

圧倒的支持を受ける湖南テレビの番組

長沙の湖南テレビは、中国の地方局でも屈指の人気番組数を誇る。毎週土曜夜に放送されている「快楽大本営」は、十年以上続く人気番組で、中国全土から圧倒的な支持を受けている。司会から映画、歌など何でもこなす男性司会者・何炅(ハーチョン)、「内地の小S」と呼ばれる女性司会者・謝娜(シエナ)を中心とする5人の司会陣に、豪華ゲスト。視聴率トップクラスで影響力が高いため、ゲストも中国の代表的な俳優、女優、台湾からも歌手等が収録に駆けつける(『台北⇔長沙の日帰り』というゲストもいるようだ)。そのほか、「天天向上」「快楽女声」「我們約会吧」など、湖南テレビは全国的にも有名な番組が揃う。
私はそれまで長沙を訪ねたことはなかったが、テレビ番組を見るにつけ、クオリティの高さ、番組数、影響力などから「長沙=テレビの都市」と勝手に決め込んでいた。
そして、訪れた実際の長沙。予測は間違いではなかった。

周辺一帯が湖南テレビの生活区

長沙黄花国際空港から車で市街へ向かう。突如として見えてくる巨大な建物。お台場のフジテレビをも彷彿させる存在感。それが湖南テレビだ。
建物だけではなく、周辺一帯の敷地も湖南テレビが管理しており、提携する青海テレビのオフィス、ホテルやリゾート、社員寮(『生活区』として食堂、散髪屋、小売店、薬局が並ぶ)なども完備。

湖南テレビの関係者曰く、「湖南テレビで働けるということそのものが、我々の誇りなんです。中国全土で認めてもらえます」

ここはテレビ番組の工場だな

巨大な主楼(メインビル)に、点在する事務棟。いくつもあるスタジオは番組収録のスケジュールがびっしりでメイク室には数人のスタイリストが常駐。設営も、収録も、撤収も流れ作業。編集室を覗くと、スタッフ達が黙々とパソコンに向かっている。一つの作品を終えても息つく間なく次の番組が待っている。まるで、ベルトコンベアーだ。
「ここはテレビ番組の工場だな」
それらの光景を見て思った。一つの小さな部品を流れ作業で組み立て大きな製品を作っていく工場のように、湖南テレビの巨大な敷地内では、設営、メイク、撮影、編集、あらゆる分野が効率的に機能し、人気番組を作り上げられていく。番組の華やかさとは別に、番組の「組み立て現場」はあまりにも淡々とした空気に包まれていた。

睡眠時間2時間、5日連続の編集作業

あるスタッフは言う。「1週間で60分番組2本分の編集です。週休は2日取れますが、5日間は睡眠時間2時間、事務所で仮眠して、ぶっ続けで作業します」
大プロジェクトの元に運営されている湖南テレビ。馬栏山と呼ばれる一帯に新社屋を建設し、現場スタッフを30歳代以下で固め、選りすぐりを英テレビ局に研修に出し、海外人気番組のノウハウを学ぶ。通販番組にも人気司会者を積極的に起用し、番組の面白さを保持させる。馬栏山一帯を少し離れるだけで、たちまち農村が広がり、最先端を行く湖南テレビとの雰囲気のギャップに驚かされる。
湖南テレビという名前が、日本のメディアで取り上げられたことがある。「台湾の人気ユニットSHEのセリナがドラマ撮影中の爆発事故で火傷」というニュースで、そのドラマの制作をしていたのが湖南テレビだったのだ。その後、セリナの所属事務所と、湖南テレビとの間で賠償問題にまで進んだ。

台湾で多く、中国で少ないグルメ番組

湖南テレビ国際チャンネルで「可可美食遊」という番組に出演した。この番組はグルメ紹介が中心の内容だったが、グルメを含んだ『レジャー全体』を取り上げるものに変更された。「グルメだけでは押せない」という局の判断のようだ。
中国でテレビ番組をよくよく見ると、グルメ番組は少ない。台湾では、「食尚玩家」「非凡大探索」など、グルメ番組の占める割合は高い。中国のテレビ局スタッフに聞くと「中国人でグルメに興味がある人間は、台湾に比べて少ない」と言う。中国の食に関する歴史は深く、八大菜系と呼ばれ、各地域に特色がある。「グルメに興味が薄い」と言えるのだろうか。

中国は広すぎてグルメ情報が成立しない!?

台湾で多くて、中国で少ないグルメ番組・・・。なぜだろうか。スタッフと話を進めていく。
まずは、土地の広さ・・・例えば、ある店を紹介したところで、中国の広さ、わざわざ行くのは遠すぎる。テレビを見て、情報をメモし、それを元に訪ねる、という文化がない。
グルメ情報番組が非現実的なのである。その意味では台湾は「グルメ番組向け」。広くない土地に台湾独自の料理、大陸伝来のもの、欧米を取り入れたもの、世界各国の食文化がひしめき合う。夜市など映像的にも華やかで、番組制作者としては、まさに「作るに事欠かない」。

人気が高い「痴話ゲンカ」番組

では中国ではどのような番組が好まれているのか。まず圧倒的に多いのはドラマ。第二次大戦前後が背景の軍隊内の物語を多く見る。また、最近人気が出ているのが「情感節目」という類の番組。嫁と姑が出てきて口論をしたり、元友人同士が借金の話で喧嘩をしたりというもの。アメリカには「ジェリースプリンガー」という人気番組があるが、これは「アメリカ版情感節目」と呼んでよい。日本では一般人が参加する番組はめっきり減った。

客より撮影クルーが優先

「可可美食遊」では長沙のあるリゾートセンターを訪れた。一つのビル全体が施設になっており、スパやサウナ、ビリヤード、仮眠室まで揃っている。撮影で一通り体験して回ったが、日本と違うのは客と撮影クルーの優先度。日本では客に迷惑をかけまいと気を使うが、中国では来館客を制して撮影が優先される。

センターの担当者は、不満を抑え込む態度で客に接する。なにせ撮影しているのは「天下の湖南テレビ」。私もロケで施設を満喫していたが、それでも「大きなテレビ番組工場内の一歯車に過ぎないんだなぁ」という思いは消えなかった。

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