大学留学事情【池田 佳史氏@オーストラリア】

日本の高校を卒業してこちらの大学に進学する場合、英語能力が絶対的に必要となります。
その英語能力の査定として、アメリカではTOEFLやTOEICが多いようですが、オーストラリアでは通常IELTSが課せられます。大学の学部や専門学校にもよりますが、最低でも6.0が必要です。

以前日本人大学生のIELTSの平均が4.5と聞いたことがあります。それと比べますと、比較的高い英語能力が必要となります。
もちろん、これは入学に際しての最低のラインですので、IELTSが6.0以上あるからといって、大学での勉強がスムーズにいき卒業できるということではありません。

英語能力といいましても、エッセイを書いたり、リサーチをしてレポートをまとめたり、グループワークでディスカッションしたり、テーマに沿ってプレゼンテーションをしたりする能力が必要ですので、単なる日常会話だけでは到底ついていくことができません。

また、日本のように小学校に書道という授業がありませんので、字が汚い方が多いです。大切な書類等は通常大文字のブロック体で書くようになっておりますが、普段の手書きの場合、大文字と小文字が入り混じっていたり、非常に癖のある字体であったりと読み取りにくい場合が多いです。
その中で、板書を写したり、また文系ですと、親切に板書をしてくれるわけではなく、教授の方が専ら早口で話すことが多いですので、それを聞き取りながらメモをとっていかなければなりません。いずれにしましても、高い英語能力が必要となります。
そのため、日本で高校を卒業し、こちらの大学に進学を希望してきた場合は、こちらの大学の傘下にある英語集中コースや英語専門学校の特別コースを履修する場合がほとんどのようです。

通常それらの英語コースはファンデーションコースと言われています。そういった意味では、こちらの大学に進学したい場合は、少し時間がかかるかもしれませんが、高校から留学をするほうが、英語を習得しながら、大学と同じような実践に近い教育を受けることができますので、より有効と言えるかと思います。
もちろん、そのような英語能力だけで大学に入学および卒業できるわけではなく、自分が進む専門教科の能力もなければなりません。

こちらの大学進学を希望してくる学生がたくさんいますが、このように、高い英語能力が必要なため、ファンデーションコース等の英語コースで挫折をしてしまうことも多いようです。
勉強が難しくホームシックにかかったり、またその中で、ワーキングホリデーや短期語学留学で来ている他の日本人と付き合い始め、日本食レストランや回転寿司店でアルバイトを始めたり、他の日本人と家をシェアーして住み、パーティーを頻繁にやったりと、いつしか大学に進みたいという当初の意志が薄れ、途中で断念したり、コースを変更して専門学校に進んだりということが少なくありません。

他の日本人学生と付き合ったり、日本食レストランや回転寿司店でアルバイトしたりすること自体が悪いと言っているわけではありません。
このような事例を数多く見てきた中で一つ言えることは、日本人学生の多くが「大学に行くこと」または「英語を話すこと」を主軸に置いているということです。
自分が将来どのような職業に就きたいのかが極めて重要です。その将来の職業に大学の資格が必要であるならば、大学に進めばいいですし、必要なければ行かなくていいわけです。
自分の将来の職業に必要なスキルや資格を取得し、そして経験を積むべきだと思います。英語にしましても同じことが言えると思います。「英語を使ってどのような仕事をするか」が重要です。
「大学を出たら就職しやすいから」や「英語が話せると就職に有利だから」という理由では、目的や意志が不十分で、困難に面した時に挫折しやすくなってしまいます。憧れだけでは留学は難しく、夢や希望、そして強い意志がなければ留学は成功しません。

ある女子生徒が留学に来た際、初日のオリエンテーションに同伴し、終わって帰ろうとした時に、ある男子学生が後ろから走ってきて、私の生徒に“君、日本から来たんだよね。今日さー・・・”と話しかけてきました。いわゆるナンパです。
そこで“あなた誰なの?”と私が尋ねると“何だ、彼氏もちかよ・・・”と舌打ちして去っていきました。
もちろん私はその女子学生の彼氏ではありませんでしたが、初日からそのようなナンパやパーティーを求めて留学に来ている生徒がいるのは事実です。
留学に来てカジノに行って借金を抱えた、アルバイト先の異性の友人のほぼ全員と性交渉を持った、大麻に手を出したなども実際にあった話です。
留学生の80%は大麻に手を出した経験があるとも言われております。オーストラリアは非常に開放的で自由を満喫できますので、夢や目的、意志がなければすぐに流されてしまいます。

遊んでいる生徒に注意をすることもありますが、大抵同じような返事が返ってきます。風俗やギャンブルなど自分がやりたいことをしたいが故に“何事も経験しなければと分からない”というような屁理屈を言ったり、“学生時代に遊んだ経験がない人間が、社会人になってはまってしまう”というような詭弁を弄します。

また、旅の恥はかき捨てではないですが、貞操観念の低い女の子は、「日本に帰ったら、ちゃんとした人と結婚するんで」と言ってきたりします。

日本国内で一部の外国人が問題を起こしますと、“その国の人たちは○○だ”と見なしてしまいやすいように、こちらでも一部の日本人留学生によって、良いも悪いも“日本人は○○だ”と見られてしまいます。
“日本人の男子学生は何でもすぐに金を出す”や“ナンパして100%落とせるのは日本人の女の子だ”というようなことが耳に入ってくることは嘆かわしいことです。
外国へ旅行する場合もそうですが、ある一定の長期間その国に滞在する場合は、一人ひとりが日の丸を背負っているのだという感覚を持って欲しいと思います。

日本では、通常履歴書に留学したということを書きますが、外国では留学したということを書くことは非常に少ないです。
きちんと学業を終えて卒業したのか、どのような資格や免許を取ったのか、どのような就労経験を積んだのか、が極めて重要で、外国でただ単に勉強したということはあまり重要視されません。

逆に、外国に何年かいて、卒業もせず資格も取らずとなりますと、ただ外国に行っただけと見なされてしまいます。留学をする生徒には、一旗揚げるまでは日本には帰らないというような強い意志を持って、大学を卒業したり、資格をとったりして欲しいと思います。

日本は閉鎖的な場合が多いですが、外国は開放的で実力主義です。
留学は、国際競争力や国際感覚を養うという意味で、非常に有効です。
是非多くの学生には、日本国内だけに目を向けてとどまらず、機会があれば留学して欲しいと思います。
日本には、素晴らしい歴史や伝統、文化、そして精神があります。その素晴らしさを大切にし、アイデンティティーを失うことなく、夢や希望、そして強い意志を持って留学して欲しいです。
そして世界の舞台で活躍し、自分の仕事を通して日本との架け橋となったり、凱旋帰国をして、世の中に貢献して欲しいと思います。

著者紹介

池田 佳史氏:Sports & Education Projects Australia Pty Ltd 代表
メールアドレス:sepapl@bigpond.com.au

池田 佳史

1972年大阪生まれ。
1991年オーストラリア・アデレードに家族で移住する。
親に頼らず、苦学の末オーストラリアと日本の大学を卒業し、両国の教員免許を取得する。
日本人補習校および現地の教員となるが、日本人留学生の実態を知り、2003年日本人としての誇りを教えるべく人格形成を重視した学習塾を立ち上げる。

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