中国の未来を担う世代「90後」【村上友治氏@深圳】

中国では既に多くの学校で夏休みに入っており、当社経営レストラン(以下当店)が入るショッピングセンターにも学生が目立つようになってきた。 例年この時期になると高校を卒業したばかりの学生がアルバイトを探しており、当店にも毎日のように面接希望者が来店する。中国の大学は9月入学なのでそれまでの短期アルバイトである。

彼らはいわゆる「90後(1990年代生まれ)」と呼ばれる世代である。この世代人口は2億6000万人強で、そのうち学生人口は1億人いると言われている。今後の中国を担う世代である。
「90後」については様々なメディアで伝えられているのでご存知の方も多いと思うが、簡単にその大きな特徴を3点紹介させていただきたい。

1.生粋の一人っ子世代
「90後」のほとんどが、一人っ子と言われている。家族・親戚からの溺愛で過保護に育てられ、精神的に未熟な面が目立ち、自己中心的で、協調性が低いなどとも言われている。
2.豊かな生活を享受
物心ついた時からすでに衣食住において不自由せず、物質的にも満たされており、高校生なら携帯電話は必須アイテムになっている。
3.価値観
ネット上の情報には常に敏感で、大量情報の中から自分独自の視点や見解を見出す世代と呼ばれている。その影響か他世代とは異なる価値観をもっており、消費行動も「非主流」とよばれている独特のものである。

今回は、私が直に彼らと接し、感じる彼らの特徴をお伝えしたい。

現在、当店には数十名のアルバイト(学生、社会人)がいる。全て「90後」である。
そんな中から、2人の学生アルバイトのエピソードをご紹介させていただきたい。

まず1人目は、当店に今夏アルバイトに来ていた高校を卒業したばかりのA君である。
彼は、一般に言われている「90後」の特徴を全て兼ね備えた「Mr.90後」とも言える人物である。しかも家庭環境が非常に良いアッパークラスの「90後」と言える。家族からの溺愛が感じられるおっとりした性格、常に絶やさぬ笑顔、体つきは少し肥満体型。何不自由なく育ってきたことが一目でわかる。彼の出勤日初日、両親が客としてこっそり来店し、我が子の働くぶりを心配そうに観察していた。
社会経験のためにアルバイトをしている彼は、退勤後は必ず「お腹がすいたので、ここで食事していきます」と言って当店で食事をする。一日のアルバイト代が約30~40元、毎回の食事代が50元ほどである。お金への価値観が違うことを伺わせる。彼は両親からの支援があり、お金は稼ぐものではなく、与えられるものと認識している。もちろん携帯電話はiPhone4。私も含めた当店従業員の中で一番高価な機種だ。また、社会情勢に明るく、一般的に言われているように独自の視点で物事を捉えている。

そんな彼はある日、「9月からカナダに留学するので、来週からシフトインできません」と突然伝えてきた。面接時は「8月中旬までシフトインできます」と言ったので採用したが、これも彼らのやり方なら仕方ないと考えたので彼の意向を受け止めた。しかし、シフトインはしていないのだが、その次の週も2,3日に一度は当店に顔をだしてくる。しかも最近は顔が真っ黒に日焼けしている。理由を聞くとハワイ旅行から帰ってきたばかりだと言う。あっけらかんとしたものだと逆に感心してしまう。これも「90後」の特徴の一つとも言える。

続いて、2人目は現役高校生アルバイトB君。
彼も「90後」であるが、A君と比べると家庭環境の違いからミドルクラス「90後」とでも言うべきか。携帯電話はもちろん持ってはいるが、スマートフォンではなく、ごく普通の機種である。ただ、基本的に不自由の無い生活はしているようで、アルバイトの目的も第一に社会経験、あとは結果的に貯金できたら欲しいものを買うと言う。彼もA君ほどではないが、たまに退勤後に当店で食事をして帰宅する。やはり家族からはかなり溺愛されているようで、シフトに関しては常に両親に相談しているようだ。また、彼も社会情勢に明るく、毎日ネットニュースを閲覧し情報を得て、独自の視点で物事を捉えている。そんな彼はアルバイト初日に遅刻した。理由は「友達と用事があったから」と言う。協調性の低さが感じ取れる一幕であった。

続いて、私自身が感じとった彼らの特徴を3つお伝えしたい。
まず1つ目は、彼らは子供の中に成熟した思考が存在しているかのように感じられる。
「無邪気な大人」とでも表現しようか。
彼らは一般的に言われているようにネットから様々な情報を入手し、独自の見解を示す。彼らと話していても思考的に子供らしさを感じさせられない。妙に大人びている。当店の農村出身の正規従業員と違って、大学進学者が大半を占めるアルバイトは社会の規律に関しての理解は深い。どうして、このルールがあり、遵守しなければならない事は理解している。しかし、行動が伴わない。遅刻にしてもそうだが、「なぜ、時間を守らなければならないのか」という事自体は理解している。ただ、やはり何回も遅刻する者がいる。その言い訳は「疲れて寝ていました」「携帯で友達とのおしゃべりが弾んで」など笑顔で伝えくる。この傾向は男子学生に強く、女子学生はこういうことが少ない。全てというわけではないが、男子学生は経験を、女子学生は貯金を目的にしている子が多い。目的が男子学生よりはっきりしている分、仕事に対しての意識の違いがそうした傾向を生んでいる。

2つ目に、彼らには覇気(仕事でのモチベーション)が感じられない。欲がないのか、目的が曖昧からなのか、同じ「90後」のアルバイトでも、社会人アルバイトと比べると明らかに仕事へのモチベーションが違う。当店には2名の社会人アルバイト(女性)がいるが、彼女らも「90後」である。正規の仕事を終えてから当店にアルバイトとしてやってくる。目的は「お金を稼ぎ、両親に仕送りする」ためである。彼女らは、言いたい事ははっきり伝えてくるし、ミスを犯しても反応がある。学生アルバイトは、物静かに黙ってミスが発覚されるのを待っている。ただ、素直にミスを認める傾向がある。言い訳が良いとは思わないが、何らかの反応があったほうがこちらも対応しやすい。

3つ目に、上記の特徴とも関連すると思うが、日本でも一時もてはやされた、「草食系」が多いのも特徴の一つと考えられる。学生アルバイトの中には両親の反対を押し切ってアルバイトに来ている女子学生もいる。かたや、両親に反対されて辞めていく男子学生もいる。いつの時代も女性は強いと言われるが、「90後」の男性は草食化の傾向が特に強い。8年前、私は中国に留学生としてやってきた。その当時交流があった男子学生は皆ぎらぎらして覇気があった。勿論、地方と大都市というギャップもあると思うが、深圳で接する男子学生は総じて「草食系」である。逆に女子学生は男性よりは「肉食系」である。彼ら「90後」は女性の社会進出がより進むかもしれない。以上私が感じている彼らの特徴である。

ネット検索中の授業員

画像の説明

世間では「自己中心的で独りよがり」、独自の価値観から「非主流」と呼ばれ他世代からの批判も多い彼ら「90後」だが、逆に「個性に富み、創造性が高く、起業家精神が旺盛」とも言われている。両親のサポートもあり海外留学のチャンスが多い彼らは、更に多くの価値観と触れ合うことが出来る。そんな彼らが今後の中国を支えていくことになる。新しい価値観をもった彼らの今後にはますます注目が集まるであろう。また、既に彼ら「90後」の次の世代、「00後」もメディアで取り上げられてきている。今後、彼らとビジネスをする機会もあるだろう。私自身も彼らの動向に注目していきたい。

著者紹介

村上友治氏
元威凌克餐飲(深圳)有限公司 火間土海岸城店 店長

村上友治氏

1976年和歌山県白浜町生まれ、兵庫県淡路島育ち。
大学卒業後、3年間日本で働いた後退職。2003年に中国西安西北大学へ語学留学。
その後、雲南省昆明と四川省重慶でホテル営業マンとして日系企業営業を担当。
2008年ベンチャー・リンク深圳に店舗管理マネージャーとして入社。
毎日の刺激的な変化の中で揉まれながら、
これからの中国を担う人材育成のために奮闘中。

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