高校長期留学事情(2)【池田 佳史氏@オーストラリア】

留学が続かないもう一つの理由、留学の目的がはっきりしていなかったり、不純であったりするケースです。

留学すれば“すぐに英語が話せるようになる”や“箔が付く”と勘違いをして留学にくる学生がいます。以前にも述べましたが、そう簡単に英語が話せるようにはなりません。もちろん、ホームステイをして現地の学校に通えば、買い物程度の日常会話はすぐにできるようになるかもしれませんが、色々なテーマでディスカッションをしたり、プレゼンテーションで発表したり、書物を読んで理解したり、エッセイを書いたりすることができるようになるには、相当な時間と努力が必要です。“英語を話すことができる”というよりもむしろ、“英語で何を話すか”や“英語を使って何ができるか”が極めて重要です。通訳や翻訳など英語自体を本職とする場合は別ですが、自分の職業で生かせる能力やスキルがなく、ただ英語を話せるだけでは役に立ちません。極端な事を言えば、英語を話す事ができなくても、自分の仕事に対する能力やスキルがあれば、通訳を使えばよいことです。また、自国の文化や歴史、政治経済に疎ければ、現地の人たちとの交流やディスカッションもできません。“国際化”とは“英語が話せること”だけではなく、また“交流”とは“遊ぶこと”だけではありません。真の意味での国際化や交流を図る必要があると思います。

日本での大学受験で帰国子女枠を狙って留学してくる学生もいます。基本的に、その国の大学に行くには、その国の高校へ行くべきで、それが一番の近道だと思います。例えば、ドイツの大学に行くにはドイツの高校に、フランスの大学に行くにはフランスの高校に行くといった具合です。日本の大学に行くためにオーストラリアに留学するものではないと思います。世界の大学にということであるならば、国際バカロレアを履修すればよいかと思います。ただこの国際バカロレアはSACEよりもはるかに難易度は高く、かなりの言語能力(英語能力)が必要とされます。現在、日本の大学でも帰国子女での受験で、国際バカロレアを課しているところも多いようです。
また、こちらのSACEを履修するものの、非常に大変だったことから、こちらの大学でより勉強しなければならないことは容易に想像がつき、チャレンジをしようというよりも、日本でより楽で華やかな大学生活を送りたいという欲望が勝り、結果帰国子女で日本に帰国する学生もいます。
言語に関しましても、滞在年数と同じ年数で忘れていくとも言われています。例えば、2年間留学しても日本に帰って練習しなかったり、使う機会がなければ2年で話すことができなくなるということです。また、留学期間は日本語を使わないため、漢字を忘れてしまったりと、日本語能力が低下しやすいです。留学前にしっかりとした目標や目的意識、志を持って留学に臨んで欲しいと思います。

一番悪いケースとしまして、日本で何らかの問題を抱え、逃げて留学をしてくることが挙げられると思います。学業不振で行く高校がない、日本で不良をして退学寸前になった、引きこもりや閉じこもりをしたなど、様々な問題です。ただその様な問題を抱えていたからいけないという訳ではありません。心機一転、志を持って留学に臨めば問題はないのですが、残念ながら大半がそのような問題を正面から向き合い解決しようと努力をせず、環境を変えれば直るという安易な考えから留学を選び、また親御さんも問題が露呈し世間体が悪いことから、海外に送り出すというケースが多いようです。
このような場合、日本での問題を、本人をはじめ、親御さんも学校のせいにしたり、先生が悪い、友達が悪い、環境が悪いと決めつけ、環境を変えるようですが、根本的な原因の追究をしていないために、遅かれ早かれまた同じように文句を言い始め、結局今度はニュージーランドやカナダ、アメリカと、また環境を変えようとします。これには親御さんに大きな責任があると思います。見栄や世間体により子供を留学させ、全てを留学エージェントに任せきりで、きちんと子供のモニターをすることなく、お金だけを送金します。それによって子供たちは自由を満喫する上に、潤沢な遊ぶ資金がありますので、不良化してしまいます。酒、ギャンブルだけでなく、刺青や大麻にまで手を出す学生もいます。色々な問題が発生した場合でも、「私は子供を信じます」と学校側を信じなかったり、校則を破っていても「私たちの若い頃にもそれくらいやったことがある」と問題を軽視したり、「学校に毎日行ってくれているだけでも本望です」と問題を無視したりと、全く問題解決に至らない場合も多くみられます。結局は留学が長続きせず、帰国を余儀なくされます。

以上、色々な悪いケースを述べましたが、留学エージェントや受け入れ機関も、募集に関わってくるので、表には出しません。しかし、このようなことが実際に起こったことは事実です。大麻に手を出した、乱交パーティーで退学になった、先生にナイフをチラつかせて強制退去となった、授業料をカジノで使ってしまった、妊娠して帰国を余儀なくされたなど、たくさんの問題が実際に起こっています。
ただ、私は留学を否定したり勧めていないのではありません。むしろ逆に今の日本人学生には是非海外に出て留学を経験して欲しいと思っております。私の知り合いの中には、留学して会計士、エンジニア、教師など、日本のアイデンティティーを忘れずに第一線で活躍している方もおられます。また、アデレードには日本人の弁護士、歯医者、看護士、義肢装具士もおられます。日本という国を客観的に外から見ることのできる機会でもあります。世の中には、留学したくてもできない学生がたくさんいます。それどころか、貧しくて義務教育さえ受けることのできない子供たちがたくさんいます。日本の学生には、もし留学の機会が与えられたなら、それ自体に感謝すべきことであり、是非その機会を利用し、日本人というアイデンティティーを忘れず、両国の架け橋として社会に貢献して欲しいと思います。そして、親御さんも教育を第三者に丸投げするようなことを避け、全力で子供たちの未来を考えて教育にあたって欲しいと願っております。

著者紹介

池田 佳史氏:Sports & Education Projects Australia Pty Ltd 代表
メールアドレス:sepapl@bigpond.com.au

池田 佳史

1972年大阪生まれ。
1991年オーストラリア・アデレードに家族で移住する。
親に頼らず、苦学の末オーストラリアと日本の大学を卒業し、両国の教員免許を取得する。
日本人補習校および現地の教員となるが、日本人留学生の実態を知り、2003年日本人としての誇りを教えるべく人格形成を重視した学習塾を立ち上げる。

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