負けず嫌い【小尾春氏@ベトナム】

第2回 負けず嫌い

ベトナムについて紹介してある文章に、「ベトナム人は勤勉」と書かれていることがよくある。実際に、他の国々と比べて、そうなんだろうと思う。ただ、私自身はこの言葉に少し違和感を感じていた。決して「勤勉じゃない」というつもりはないけれど、所謂日本的な勤勉さとは、何か違う気がするのだ。

そんな時、「ベトナム人は勤勉、とよくいうけれど、あれは正しくない。負けず嫌いなんだよ。」と話してくれたのは、日本滞在暦の長いベトナム人の知り合いだった。だから戦争にも勝ったし、いろいろな勝負事で成果を出してきたのだと。数学オリンピックしかり、ロボットコンテストしかり。

この言葉には成程!と思ったし、その後も何度か思い出せられる場面があった。例えば、ベトナムの会社で働くようになってすぐ、スタッフを雇った時のこと。まずは1名、大学を卒業して間もない子を雇った。しばらくして仕事の量が増えて来た頃、今度はもう少し社会人経験の長いスタッフを雇った。すると、不思議なことに、最初に雇った方の子のパフォーマンスが目に見えて上がったのだった。仕事のスピードが速くなっただけでなく、仕事について後から入ったスタッフとディスカッションをしたり、新しい仕事のやり方について提案してくれたり。こんなに仕事ができる子だとは思っていなかったので、驚くやら、嬉しいやらだった。

そしてそれから数ヵ月後。社内の事情で後から入った子を異動させることになった。先に入った子がとてもよく働いていたところだったので、1人に戻っても大丈夫だと思い、私も異動を承諾した。しかし、そうすると、先に入っていた子の仕事ぶりは、また以前の通りに戻ってしまったのだった。

このとき、冒頭の言葉「ベトナム人は勤勉ではなく負けず嫌い」を久しぶりに思い出し、本当にそうだなあと思ったものだ。

上述の例の場合、勤勉と負けず嫌いの違いは、やはり「平時」の動き方にあると思う。戦う相手がいない時も努力するのが勤勉なら、そういう時はのんびりするのがベトナム流負けず嫌いなのかもしれない。目的がはっきりしないとき、競争相手がいないときは、彼らの闘争スイッチもオフのままだ。

しかし、目的をはっきり理解し、かつ競争相手を認識したときに発揮される瞬発力は、大したものだ。私は何回か、「絶対締切りに間に合わないだろう」と思われるような状況でも彼らが涼しい顔をして間に合わせる場面を見てきた。締切りに間に合わせる必要が本当にある、と理解した時の動きは素早く、連携プレーも見事だ(しかし、本当にどう考えても間に合わないと判断した場合、あっさり諦めるケースも同じくらいあるので、注意が必要だ)。

日本人がベトナムで仕事をする上で、ベトナムのやり方に合わせるしかない場面は沢山ある。というより、殆どがそうだと思う。その中で、どうやったら彼らの闘争スイッチをオンにできるかを研究するのも面白い。

著者紹介

小尾晴(おび はる) 旧姓 大村
サイゴン証券株式会社 Director 兼 日本ビジネス開発部部長

小尾春氏

1973年石川県生まれ。
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。大学院在学中にハノイ国家大学に留学。
農村開発調査コンサルタントとしてJICAやJBICの案件に参加後、日本アジア投資株式会社に勤務、ホーチミン市に赴任。
2007年よりベトナム最大の証券会社であるサイゴン証券株式会社に当時唯一の外国人スタッフとして勤務、日系顧客を担当。
現在は退職し日本に帰国、通訳として活動中。

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