高校短期留学事情【池田 佳史氏@オーストラリア】

最近では以前と違い、長期留学の他に短期留学、体験留学、交換留学など、留学そのものがしやすくなり、身近なものになりました。
ただ、その分生徒達が留学の有難みを感じて勉学に励むということが少なくなったように感じます。
つまり留学に対する目的意識や意志が弱くなってきているように思います。
このことは留学する本人だけでなく、保護者や学校関係者にも大きな責任があるように感じます。

修学旅行先も海外が多くなってきましたが、「修学」よりも「旅行」のほうに重点を置かれているようで、私がシドニーやゴールドコーストに行った際も、
免税店やブランド品店で学生服やセーラー服を着た生徒達があふれかえっている場面に遭遇し、嘆かわしく思いました。
もちろん修学だけをして観光や買い物をしてはいけないということではないのですが、
現地の人たちと交わり文化や習慣を学ぶことよりも、写真を撮ったりして思い出作りに力を入れたり、買い物にしましても親御さんが大金を渡してお土産やブランド品を買ってくるように頼む場合が多いらしく、
どうも修学旅行というよりも単なる海外旅行というようなことが多いようです。

高校留学に話を戻しますが、まず短期留学や交換留学についてお話します。
短期留学や交換留学では、いずれ日本の高校に戻りますので、少々勉強ができなくても、素行に問題があっても学校側が大目に見てくれる場合が多く、留学生本人も「いずれ日本に帰るし」という態度で、真剣に勉学に励み現地の人たちと交流して学ぶという姿勢があまりみられません。
ある時こういうことがありました。
姉妹校として1年および2年の交換留学生達が、
男女入り乱れて(大麻までの事実はつかめませんでしたが)飲酒喫煙のどんちゃん騒ぎのパーティーを計画しました。
もちろんホームステイ先ではできないので、モーテルの一室を借りてパーティーをしました。
全員何らかの口実を設けて外泊許可を取ったり、ホームステイ先を抜け出してきていました。
結局その事実をつかんで学校側に報告をしたのですが、そのパーティーに参加した10名以上の生徒の内、3名が素直に告白しました。
そしてその3名は校内謹慎を受けましたが、事実を認めなかった残りの7名以上は罪を逃れました。
学校やエージェントは、留学生募集に支障をきたしますので、あまり深く調査を行うことはありませんでした。
また、一番悪かったのは、その交換留学生と共に同伴したその姉妹校の先生で、
「モーテルに行ってパーティーしたのか」と生徒達に聞いただけで、パーティーに参加した生徒の多くはもちろん「していません」と答え、「頼むから問題を起こさないでくれ」と、それで調査は終わってしまいました。
生徒の中では「もうパーティーができないじゃねーかよ」と仕返しするために告げ口をした生徒を探し始めました。
残念ながら日本から同伴した教師の方は、ことなかれ主義が多く、きちんと生徒達の行動を見守ることなく、
問題が起きるとその問題が起きた原因を追究し改善策を講じるということをせず、ひた隠しにしてしまうことが多いようです。

いずれにしましても、日本人留学生の風評が落ちているという事実があり、こちらの学校で日本との姉妹校を取りやめるという学校も出てきているという話も聞きました。
日本の文化や歴史を知らないために交流にもならず、授業態度や素行が悪いので姉妹校として交流しても意味がないということです。
もちろん、真面目に努力している日本人留学生もいるのですが、多くが不良化していることは否定できません。
旅の恥は掻き捨てではないですが、いずれ日本に帰るのをいいことに、こちらで好き勝手なことをしている一部の日本人留学生により、現地の人から“日本人学生は”と十羽一絡げにされてしまうこともあります。
留学する日本人学生には、一個人ではなく日の丸を背負って留学しているという意識を持って行動して欲しいと思います。

留学に対する意識も問題だと思います。
留学をしたからといって箔が付くわけでもありませんし、ブランド品のように自慢するものでもありません。
日本ではまだまだ“英語が話せる=頭がいい”や“エリート”というイメージが強いようです。
留学の理由を尋ねますと「日本で就職に有利だから」と答える学生が多く、他の国から来ている留学生とは留学目的が異なる場合が多いです。
他の国から来ている留学生、特にアジア諸国から来ている留学生は、英語を一つの武器として考え、英語そのものを主にしているわけではありません。
英語を使って自分のスキルを活かすために留学するという意識が強いです。
自分の希望する職種に対するスキルや能力、資格が前提にあり、それらをより活かすために英語という武器を手に入れたいと考えています。
もちろん卒業後母国に帰って貢献する人もいれば、そのまま諸外国で働く人もいます。
しかし日本人留学生のほとんどは日本に帰っての大学進学や就職を考えており、日本国内という思考の枠を越えることが少ないです。
また留学理由を「国際人になるため」と答える生徒もいますが、英語を話せることが国際人ではありません。
英語圏にしばらく住めば買い物に行くぐらいの日常会話はすぐにできるようになります。
しかし高校や大学を卒業できるくらいの英語能力、自分の仕事に活かせるだけの英語能力となると別問題です。
また、日本の歴史や文化、政治経済について現地の学生とディスカッションできるかというと、これも非常に難しいです。
まず大半の留学生は日本の歴史や文化、政治経済を知らず、ディスカッションどころか、こちらの生徒達に教えられるというケースも少なくありません。自国を知らずして、日常会話程度の英会話を学び、西洋かぶれして鼻持ちならない留学生も多くいます。

ゲーテは「自国の文化を理解することが一番の国際人」と言っていますが、まさしくその通りだと私は思います。
ブランド志向のように安易に留学を考える前に、日本の歴史、文化、風習、政治、経済、そして日本語そのものに興味を持って学び、留学して欲しいと思います。
そうすれば母国、そして日本人であることを誇りに思えるようになり、それによって他国の民族、歴史、文化などをリスペクトできるものだと思います。
ただ留学そのものを否定するものではなく、留学をしないほうがいいと言っているわけでもございません。
逆に留学は非常に価値のあるものだと断言できます。

短期留学とはいえ、日本という国を客観的に見ることのできる良い機会であり、また色々な人種と交わり幅広い考え方や視点、そして文化を学ぶ素晴らしいチャンスです。
世の中にはまともに教育を受ける事のできない子供たちもたくさんいます。
ましてや留学をさせてもらえるということは非常に恵まれた環境にあります。
若さと時間は戻ってきませんので、是非この留学というチャンスを与えられたことに感謝し、日本国と諸外国を結ぶ架け橋となるような真の国際人になるよう努力をして欲しいと思います。

著者紹介

池田 佳史氏:Sports & Education Projects Australia Pty Ltd 代表
メールアドレス:sepapl@bigpond.com.au

池田 佳史

1972年大阪生まれ。
1991年オーストラリア・アデレードに家族で移住する。
親に頼らず、苦学の末オーストラリアと日本の大学を卒業し、両国の教員免許を取得する。
日本人補習校および現地の教員となるが、日本人留学生の実態を知り、2003年日本人としての誇りを教えるべく人格形成を重視した学習塾を立ち上げる。

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