(この記事は2012年に発表されました。)
2月15日、シンガポールはかつて日本軍によって占領されてから70年を迎えた。
太平洋戦争が終結する1945年8月までこの島は昭南島と呼ばれ、日本軍の統治に反対する者や疑わしい者を集め、移送し虐殺することもあったという。
70年後の現在、シンガポールは独立国家として著しい発展を遂げ、東南アジア経済の勃興と他地域の停滞を理由に世界中から新天地として目指しやってくる注目都市となった。
70周年の当日は極めて普段通りに過ぎていった。人々は占領された日を特に意識すること無く生活し仕事に勤しんでいた。
それでも目立たずとも記念式典は行われた。
日本軍がマレーシア側から上陸した地点にほど近いクランジエリアの記念碑「Kranji War Memorial」でシンガポールの軍事関係者、学生、遺族などが集い、日本大使館の鈴木大使も出席の上、追悼式典は粛々と行われた。
現在のシンガポールは国威発揚や愛国心の醸成のためにかつての日本軍の占領を前面に押し出すことはない様だ。
記念式典がクランジという辺鄙な場所に限られ、市中心部では目立った活動はみられなかった。
しかし我々当地で暮らす日本人は話題にせずとも占領の事実は押さえ、意識化に置いておくことが必要ではないだろうか。急速な経済発展の上澄みでひととき浮かれてカジノだサンズだと無意識でいるのと、わかっていながら生き、コミュニケーションを取るというのは大違い。ことさら自分たちを卑下する必要は無いが、お互いにいろいろな事情があって現在に至るのだということを押さえておくことはより深い関係の構築に資するに違いない。