英語教育【池田 佳史氏@オーストラリア】

前回外国語教育について述べましたが、今回は英語について重点的に述べたいと思います。

こちらの学校では母国語である英語は必修教科の一つですが、移民や難民、そして留学生の受け入れが多いことから、英語を母国語としない人達や英語が話せない人達対象の英語をESL(English as a Second Language)と呼びます。
日本ではほぼ100%の人達が日本語を話すのに対し、オーストラリアでは約80%の人が英語を話すと言われております。
つまり二割、5人に1人は違う言語を話すということです。
訛っている英語を話す人も少なくありません。
この訛りですが、その人種の言葉独特の訛りがありますが、私個人が感じることに、アクセント(強弱)が非常に大切で、このアクセントの位置を間違えると通じないことが多くあります。

例えば私の経験でいいますと、50%の50パーセントを“パ”を強調して言ってしまい、50人という意味である“50 persons”と間違われたり、ハンバーガーショップのマクドナルドを“ナ”を強調して言ってしまい、全く通じなかったということがありました。
日本語は他の言語に比べてアクセントの強弱が少ないです。
もちろん日本語にも箸(は(・)し)と橋(はし(・))のようなアクセントの高低があります。
しかし文章の意味や内容から間違ったアクセントの高低であっても通じますが、英語の場合は全く通じません。
こちらに移住した当初、中国系の人達がとても訛っているのにもかかわらず、比較的現地の人に通じており、日本人の英語がきちんとした文法で話しているのに通じないことを不思議に思うことがありました。
後々このアクセントの強弱の位置が大切なのだと分かりました。

さて、このESLですが、個人的にこのESLの先生方に素晴らしいものを感じます。
英語がままならない留学生達に英語で英語を教えることは大変なことだと思います。
留学生はまだ多少英語の知識があり、若いので吸収が早いかもしれませんが、難民の方達は英語が全く分からない人たちもいます。
そのような方達にも立派に英語を教えられ、しばらくすると(個人差はありますが)英語を話せるようになります。
また大人の人達に教える場合には、ただ英語が分かる、話せるというレベルまでを目標としておらず、社会人として自立して生きていけるようにしていますので、履歴書の書き方や面接での言葉遣い、そして職場体験と、かなり実践に近い英語を教えています。
通じて何ぼ、実践で使えて何ぼという会話や実践重視の会話ということが伺えます。
たとえ訛っていようが、多少文法が間違っていようが、こちらの言わんとしていることが相手に通じることが大切だ、実践で使えていなければ意味がないということが前提にあるように思います。
日本ではあまりにも完璧な英語を求めすぎて、会話の上達が遅れたり、発言を控えたりすることがあるのではないかと思います。
また、相手に理解できる英語よりも、文法の正しい英語にとらわれて、文法は間違っていないものの表現が違っていたり、相手が間違って意味を捉える結果になることも少なくありません。
私自身も正しい文法の英語を話したつもりが、相手に苦笑いされることも多くありました。

例えば、学生時代にオーストラリア人の女友達が仕事を手伝ってくれて、“面倒をかけてごめんね”と言うつもりで“I am sorry to get you into trouble.”と言ったところ、

「意味は分かるけど、もし私の両親の前だったらびっくりされるかもね。」

と言われたので、

「どうして?」

と尋ねたところ、

「妊娠させるという意味があるから」

と言われて驚くと同時に気恥ずかしい思いをしました。
後でその子に聞いたところ“I am sorry to trouble you.”でよいと言われました。
また、日本人の女友達がオーストラリア人の男友達に

「また一緒に遊ぼうね」

と言うつもりで“Please play with me again.”と言って苦笑いされたと言っていました。
“play with”は

「(子供やおもちゃなどで)遊ぶ」

という意味や

「いじる」、「勝負する」

という意味があり、

「また一緒に遊ぼうね」

と言うときには通常そのような表現をしないようです。

どれだけ文法的に正しい英語を話したとしても、相手に言わんとしている内容が伝わらなければ意味がありません。
日本の英語教育において、もちろん英文法も重要ですが、そういった意味で細かい所にこだわらず、実践で役立つ英語、つまり日常会話だけでなく自分の職業で使えるような英語教育導入が必要に思います。
ただ、個人的に日本における小学校への英語教育導入は反対です。
と申しますのは、母国語以上に外国語が伸びることはありませんので、母国語である日本語能力が低ければ英語もそれ以上には伸びません。
最近、日本人学生と話をしていますと、こちらの意図が伝わらず、頓珍漢な答えが返ってくることがよくあります。
また一つのテーマにおいて話をさせると支離滅裂であったり、趣旨がぼやけていて何が言いたいのか分からなかったりすることが多々あります。
このことは数学においても非常に関連性があるように感じます。
筋道を立てて話をすることができない学生は、まず数学における論理の展開ができないと思います。
また語学能力が低いと、数学の問題において、何を求めなければならないのか、何が条件で与えられているのかさえも把握できないために当然解くことができず、結局は苦手となってしまうように思います。
数学離れが激しいようですが、改善させるためには、私個人の意見としましては、まず国語能力の向上が必要に思います。
南オーストラリア州でも、数学離れが激しいです。
政府は改善するために、大学入試において理系教科にたいしてボーナスポイントを与えたり、理系専門の学校を設立したりと、色々と策を講じているようですが、あまり効果がないようです。
新聞の社説では、理系教科が苦手だった親御さんが子供達に対しても“私もできなかったから”と子供達の苦手意識を容認してしまうことが大きな原因だとありましたが、私の意見としましてはやはり国語能力(こちらでは英語能力)が原因だと思います。
早いうちからの計算機の導入も一つの原因だとは思うのですが、丁度12,3年ほど前から当時中学生の必修教科であった英語の古典にあたるラテン語が廃止されました。
ラテン語を教えることの出来る先生が十分にいないということが理由だそうですが、それから後に学生の数学能力の低下や数学離れが浮き彫りになり始めました。
私には関連があるように思います。

真の国際人になるには、訛りのない正しい英文法を利用した英語を話すことはさほど重要ではなく、英語で何を話すのかということのほうが重要です。
母国語を大切にし、色々な文化や歴史を学ぶことが大切です。
その上で言語能力が身につけば、おのずと英語の習得も早くなるのではと思っております。

 

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