このところ台湾はすっかり夏空に覆われて、昼間では35℃を超える日もでてきました。
太陽が日に日に力強くなり、本格的な梅雨を前にして湿度も高まってくるこの時期に作られるのが『東方美人茶』です。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、『東方美人茶』は蜜のような濃厚で甘い香りを持ち、小さな芽を一つ一つ丁寧に手摘みして作られるので茶葉の様子も極めて美しい高級茶です。
また『東方美人』という優雅な名前も、かつて大英帝国のビクトリア女王がこのお茶を飲んだ際に茶器の中で可憐に舞う茶葉の美しさと、その香りに感動して「Oriental beauty!」と賞賛したことに由来するとか、自身の誕生日には必ずこのお茶を楽しんだとか、興味深い逸話に溢れたお茶でもあります。
さて、この東方美人茶。
じつは学術上では『台湾烏龍茶』と呼ばれ、その他の烏龍茶とは一線を画していることはあまり知られていないかもしれません。
世界的なお茶の名産地でもある台湾には、言わずと知れた銘茶がたくさん存在します。
南投縣の『凍頂烏龍茶』(とうちょううーろん)、台北は坪林の『文山包種』(ぶんさんほうしゅ)、同じく木柵地区の『木柵鉄観音』(もくさくてつかんのん)、近年では阿里山や梨山などの高海抜茶園で作られる『高山茶』なども有名ですね。
実は、これら多くの烏龍茶の製法が中国の福建省に起源を持つのに対して、東方美人茶は台湾で発明された烏龍茶なのです。
大きな特徴としましては、原料に「ウンカ」という一般的には茶の害虫とされる虫の影響を受けた茶葉を使うところで、これにより最大の特色でもある蜜を連想させる甘い香りを引き出すことに成功しています

【写真は東方美人の茶園】
茶樹は除草も行なわず、可能な限り自然の状態に保つことでウンカの生態系を壊さないように栽培されています。
当然のことながら「ウンカ」の恩恵を受けるためには、農薬を散布することは許されず、基本的に東方美人茶の農園は無農薬栽培が採用されているわけですが、奇しくも台湾観光局の本年度のテーマは台湾ロハス(LOHAS)。
もともとは害虫であったはずの「ウンカ」を活用して今や世界でも名高い高級茶を作ってしまう柔軟性と、この小さな島国の中でこれ程までに多様なお茶を保持できる嗜好の多様性。「まさに多様性を包み込める寛容こそが台湾LOHASの根底にある精神なのです!」なんて、観光大使の羅志祥君が言ってくれたら面白いだろうなぁ。などと考えながら東方美人を製茶しているこの頃です。
東方美人の製茶につきましては、下記のページでも動画で説明しております。
・【台湾福茶fbページ】http://www.facebook.com/taiwan.fuku.cha