茶の山奇譚(南投縣名間郷)【市島宋氏@台湾】

「子、怪力乱神を語らず」と言われた古代の聖人の目にはどう映るのだろうか?
現代の台湾でも時に神仏、鬼の類が人々の心深くに存在していることを知らされることがある。

これは私が長年取引している南投縣名間郷の茶園に宿泊しながら製茶していたときのこと。

その日は朝から雨に見舞われ、茶摘みができなかったことから友人でもある茶園主と共に観光をかねて名間郷にある仏閣やお宮へお参りに行くこととなった。

初めに案内された『受天宮』は、道教において高位にあると言われる北極玄天上帝を祭ったお宮で、全国から参拝者が訪れている。

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受天宮は、ドッシリとした重厚な作りで、原色系の色彩に彩られたお宮とはどこか印象が違う。
骨太で頑強な男性的なイメージだ。

祭壇には絶え間なく参拝者が訪れており、傍らで楽団が奏でる特徴的な旋律が人々の祈りと重なり合って厳かな雰囲気を醸し出していた。

次に訪ねた場所は山中に建てられた『白毫禅寺』という有名な禅寺。
広い境内に設けられた巨大な鐘突き堂から見渡せば、上手から下手に流れる高速公路3號線を
眼下に、広大な名間郷の平野を望める景勝地でもある。

友人は漢民族の伝統宗教である道教を信奉すると同時に熱心な仏教徒でもある。
彼の家の最上階には道教の神様とご先祖様が祭られており、それに加え1階のリビングには観音様が祭られていたので道教の『受天宮』と仏教の『白毫禅寺』にお参りすることに何の不思議も無く日が暮れていった。

結局その日は夜の製茶作業も無かったので友人と早めの夕食をいただき、前日に仕上げていた金萱茶(烏龍茶の一種)を飲みながら談義していたのだが・・・。

時計が20時を過ぎたころ「もう一箇所案内したいところがある」と連れて行かれたのが『尪姨』(アンイー)と呼ばれる女性のシャーマンの祈祷所で、此処では夜な夜な人々が悩み事を相談に訪れたり、何か悪いことが続いたときなどは「お祓い」なども行われるとのこと。

話には聞いていたが長年台湾に住む私も始めての場所だ。

祈祷所は静まりかえった住宅街にあった
画像の説明

1人きりで通された祈祷部屋では、燻されるように焚き込められた線香の煙と、その中に鎮座する道教の神々の鬼気迫る迫力たるや夜の闇も手伝って鳥肌が立つほどで、さすがにフラッシュを使ってカメラに収めることは遠慮してしまった。

祈祷部屋から出てきた私に初老の『尪姨』(アンイー)が言うには、

「この場所に慣れていない人は、たまに気を失って倒れたりするのよね、あなた大丈夫だった?」

とのこと、あんぐり開いた私の口からは

「たっ、たのむよ!(先に言ってくれ)」(大汗)

思わず日本語が吹き出たのであった。
その後、無事?に友人宅(茶園)に戻りいつもの仮眠部屋で毛布に包まったのだが、なんだか気味が悪く、電気を消して目を閉じると祈祷所で見た道鏡の神様が枕元に立っているようでなかなか寝付けなかったものである。

「1,怪力乱神を語らず」
小雨に濡れるアスファルトを切りつつ、
未熟者を笑う孔子先生の声が名間郷の闇を渡って行った。

 

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