世界的な経済停滞の危機!【野瀬正一氏@シンガポール】

世界的に経済の停滞がささやかれています。
シンガポールもご多聞に漏れず、今後の経済見通しについて慎重な見方が増えています。
GDPの予想成長率も下方修正されました。
内需の限られるシンガポールは、世界経済の混乱の影響をダイレクトに受ける国です。
特に国の基幹産業となっている貿易、運輸、金融は他国の動向が大きく影響します。
このような書き方をすると、典型的な日本人は「好事魔多し。
やっぱり日本がかつて経験したような不景気が来るんだ」と悲観論を先取りしようとし、メディアも「リーマンショックの再来か」と煽りに入ります。

人は他人から賢いと思われたい動物ですので、「いつまでもうまく行く」と言っていると愚かに見えますが、「良いことは長くは続かない」と言うと賢く見えるという習性があります。

ですから、おそらく日本のメディアではかなりの経済危機がささやかれていることでしょう。
しかしイコール、シンガポールに大きな変化が起こっていると考えるのは早合点です。
こちらに暮らしていて、今のところ目に見えて大きな変化を感じることはありません。

シンガポールでは9月の終わりに4回目のF1が開催されました。
世界中からセレブが集まり、ライトアップされて夜通し騒いでいる様子を見ると、不景気とは無縁のように感じられます。
マリーナ・ベイ・サンズにはルイヴィトン島「Louis Vuitton Island Maison」がオープンしたばかりです。
しかし国内ニュースや経済指標は、好調を維持していたシンガポール経済が減速する可能性を少なからず示唆しています。
これからシンガポールがどうなって行くのか、もちろん私には確たることは申し上げられません。
ただ、前回のコラムに書いたような外国人労働者の受け入れ厳格化の問題、若年層の意識低下、インフレ・物価高、利己主義の横行など、国民の中に社会的不満が高まってきていることも否定出来ません。
変化はゆっくりと、しかし着実に進んでいくでしょう。
私個人はシンガポール経済の先行きには楽観的です。
その理由の1つはシンガポールが金融的に既に大きなアドバンテージを有していることです。
シンガポールは憲法で政府に収支の均衡を義務付けており、健全な財政黒字国です。
アメリカの債格下げ後も北欧諸国などと並んでアジア唯一のトリプルA国として、債務問題とは無縁の存在です。
また、優秀な技術や人材を世界中から誘致することに関して手を緩めておりません。
他国との良好な関係をもとに政治主導で自国の成長シナリオを進める戦略は、まだまだ有効に機能しているように思えます。

企業・個人の進出に関する話を申し上げますと、私たちは他人の芝生が青く見えるという特性と、未知のものに対しネガティブな情報を受けると必要以上に警戒してしまうという、二面性を常に持っています。
シンガポールへの進出を考える時はそのどちらも正解ではありません。
今、たくさんの日系企業がシンガポールを訪れており、私も進出をサポートする立場から日々アドバイス致しておりますが、進出を判断するうえで真に大切なことは景気や環境といった客観的・外的要因ではなく、「何のために進出するのか」という強い目的意識です。
それは経営者の心の中に答えがあります。
大行は細謹を顧みず。
不況と言われる日本で成功したノウハウと確固たる信念があれば、必ずやシンガポールでも大きなチャンスを生み出せるでしょう。

 

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