独創性と統一性【池田 佳史氏@オーストラリア】

独創性と統一性

こちらの学校の現場に立っていますと、日本とオーストラリア両国の独創性と統一性の違いを感じさせられます。

例えば、人の絵を描かせても、日本の子供たちは似たような顔を書きますが、オーストラリアはユニークな絵を描く子供たちが多くいます。
人の絵はこういうものだと教えたり訂正したりすることもありません。
そもそも白人もいれば黒人、黄色人種もいますので、肌の色でも違います。何年か前に、文科省が「肌色」という言葉は差別に当たるということで、色鉛筆やクレヨンからその言葉は省かれるようになりましたが、私が小学校に行っていたころは、まだ“肌色”がありました。

また、工作に関しましても、日本は学校から工作材料を配布することが多く、生徒が同じ材料を使って同じような物を作ります。オーストラリアでは、材料は父兄の方から寄付してもらった牛乳パックであったり、ペットボトルであったりしますので、形も大きさも柄もまちまちです。

そのため、車を作るとなりますと、出来上がった車は生徒によって様々です。
このようなことから、独創性を育てるという意味で生徒達は自由に伸び伸びと作りますので、日本より秀でていると思います。
ただ、先生のことをきちんと聞いて、マニュアルに従ってやるとなりますと、こちらの生徒よりも日本の生徒のほうが秀でているように思います。

運動会でも、オーストラリアでは競技の説明程度のリハーサルを各クラスでやる程度で、入場行進や創作ダンス(組み体操)などは一切ありません。
日本では、数週間前から膨大な時間を割いて練習します。日本は比較的、見に来ている父兄や家族の方に見せる運動会で、その為子どもたちがより競技の勝ち負けを気にしているように感じます。
オーストラリアは日本に比べて統一性がなくバラバラですが、それぞれ一生懸命競技に参加し、楽しんでいるように感じます。
また、発表会でも同じように、日本は発表するために練習を重ね、発表当日は全員がきちんとそろっており、その統一性は見事です。
逆に、オーストラリアは日本に比べて練習量が少なく統一性としては程遠いです。しかし、それぞれ個性が出ており、親子ともに楽しむことを主体に置いているように思います。

私の個人的な意見としましては、日本の掃除は素晴らしいと思います。
昼休みや放課後に生徒たちが一緒に掃除をしますが、場を清める、汚したら綺麗にするという精神を養うことは大切なことだと思いますし、一人で行うことは大変かもしれませんが、みんなですると楽で、より大きなことができると実感できることも素晴らしいと思います。
オーストラリアでは、掃除は業者の人が放課後に学校に来て行います。
もちろん「ゴミはきちんとゴミ箱に捨てましょう」と生徒たちに教えますが、掃除は自分たちではなく掃除をする人の仕事という意識が強いです。

また、オーストラリアでは型にとらわれず、自由闊達な意見交換が行われますが、自分の主張を通そうとして話す場合が多く、大人の人でも授業中に私語を慎まなかったり、先生に対して質問攻めにして授業が進まなかったりというようなことがよくあります。
日本では比較的、先生が話すと私語をすぐに止めたり、いくつも質問があるときは授業後に行うということが普通に行われますが、反面自分自身の意見を持っていることが少なく、マニュアルでしか動けない人が多いように感じます。

オーストラリアは多民族国家のため、種々様々な考え方や価値観がありますので、自分の意見をはっきり述べたり、他の意見に対してもリスペクトすることが普通です。
そのため、まとめることは大変ですが、活発なディスカッションが行われます。その分、合理的に物事を考え、納得させるということが重要なのだと思います。

日本は98%以上が日本人である単一民族国家のため、意見がまとまりやすいですが、他人に合わせるような風潮もあり、自分の意見をその場ではっきり言わず、後で色々と言ったりすることが多いようです。
合理的に物事を考えるよりも、相手の気持ちなどを優先させてしまったり、一度こじれてしまうと、感情論で物事を判断してしまいがちで、発展的な議論がやりづらくなったりしてしまいます。

どちらの方が良い、悪いということではなく、それぞれ一長一短があり、時と場合にもよりますし、文化的な背景も影響します。

合理的な考えや議論は大切だと思いますが、ある意味でその割り切り方が冷たくも感じます。日本のように仕事や議論で感情を挟みますとややこしくなる場合が多いですが、義理人情で人と接することも大切だと思います。

なかなか良いとこ取りばかりできませんが、それぞれの長所を学んでいけたらと思っております。

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