日本の景気回復とアベノミクス【野瀬正一氏@シンガポール】

(このブログは2013年に、掲載したブログの再アップロードです)
最近、日本に住んでいる方々と話すたびに同じようなやりとりになります。

 -- 日本はアベノミクスですごい景気回復に沸いているようですね?
「いやー、実際はどうなんですかね。実感はないですよ」
「マスコミが言っているだけで私たちにはあまり関係ありませんかね…」

外国で暮らしていると日本に関する情報はメディアやネットを中心に収集しているので、「日本は金融緩和・株高・アベノミクスで久しぶりの景気回復に沸いている」と、皆が鼻息荒く感じている姿を想像しています。しかし日本における人々の反応は割と冷静です。それは長いデフレに慣らされて好景気の味を忘れてしまったのか、それとも元々景気回復というもの自体が幻なのか、現在進行形であるために判断がつきかねます。おそらく、どちらの要因も半々なのでしょう。

私を含め社会に出てからバブルを経験していない世代は、そもそも日本における好景気というものを体験していません。私はシンガポールに来た時に「これがいわゆる好景気か・・」と、とても新鮮に感じたことを覚えています。騒いでいる人の大半は日本のバブル時代を経験した人でしょう。そもそも「好景気」とはなんなのでしょうか?

経済学を引き合いに出すまでもなく、国家による金融政策と投資、企業の雇用創出と投資活動、人々の給与と資産の増加に伴う消費活動、そういった一連の活動が活発化することにより、お金が回り景気は良くなります。これは自明の理です。かつての経済成長はそのようなサイクルを経て実現してきました。
しかし2013年の今、そんな古いタイプの景気回復が狙い通りに実現するのでしょうか?世の中の関心も最終的にはそこに集まるでしょう。

まず日本はかつてバブルとその崩壊を経験していますので、かつてのように消費が盛んにおこなわれるかわかりません。私は若い頃によく、「バブルの時代にひと財産築いて、その時に守りに入っていたら今頃大金持ちだったろうに、皆、バカだったんだなあ…」と思っていましたが、大人になるにつれ、さにあらず。物事はそう簡単でないと気づくようになりました。今、たとえ資産が増え給与が増えたとしても、かつてのような大盤振る舞いをする人がどの程度出て来るでしょうか?皆、不景気の頃のわびしい気持ちを覚えていて、景気が良くなっても財布のひもはあまり緩まないのではないか、という懸念があります。
また、景気回復には消費の回復、消費の回復にはサラリーマンの給与の増額が実現する必要があります。かつてのような家族的経営からドライな経営になりつつある日本企業が、どれだけサラリーを上げてくれるのか。甚だ未知数です。会社は儲かっても、内部留保や別の投資に使われては社員の給与増額・消費の回復にまでつながりません。
実際、マネーがグローバル化した現在は、どの国でも「資産バブル」という形で金融と不動産ばかり外部資金が流入して、国民の給与は変わらないのに物価だけ上がるという弊害が世界のあちこちで見られます。シンガポールもご多分に漏れず、不動産バブルと物価高によって生活がしづらくなったという国民の不満であふれています。日本は健全な意味でのインフレが起こるのか、という疑問は多くの人が持っているでしょう。

そういった違和感が、「日本は景気回復だ」とメディアでもてはやされても、手放しでは喜べない原因でしょう。日本人が賢くなったとも言えます。
ただ1つはっきり言えることは、景気が回復しようとしなかろうと、かつてのような一億総中流社会が再び来ることはないでしょう。全世界的に「富める人」と「貧する人」の二極化が進んでおり、日本も例外ではありません。会社は業績が上がったからと言って無駄な社員を抱えることはありません。むしろノーガードの打ち合いをしなくてはならないような、仁義なき個人競争社会が到来するでしょう。年を取ればとるほど仕事にはスキルを求められますし、即戦力にならない若手を育てる余裕もなくなってきます。今までのように若い頃から教育してもらい、エスカレーターの順番待ちをして、中年くらいになったら偉くなるという道もなくなるでしょう。

そして、その社会が到来した時に「年齢や性別による差別を排除した、フェアで実力主義な社会」を見せつけられ、多くの日本人が戸惑うこととなるでしょう…。

著者紹介

野瀬 正一氏
WCC SOLUTION PTE. LTD.代表

野瀬正一氏

シンガポール永住権保持者
早稲田大学卒業後、東京で飲食店経営や人材ビジネスなどに携わるも、ことごとく逆風に遭う。
時代の流れには逆らえぬとアジアに出ることを決意し、シンガポールに渡る。
現在はコンサルタントとしてシンガポールへの進出サポートおよび店舗開店支援、また実業としてレンタルオフィスや店舗経営などをおこなっている。
50社ほどのクライアントと日々シンガポールおよびアジアマーケットに挑戦中。

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