利益アップのヒントは自店の中にある 【村上友治氏@深圳】

昨今中国では物価、人件費の高騰がメディアを騒がしている。
過去5年間の物価変動を示す消費者物価指数(CPI)と深圳市が発令した最低賃金は下記のように推移している。

消費者物価指数(CPI)
2007年平均 4.8%
2008年平均 5.9%
2009年平均 -0.7%
2010年平均 3.3%
2011年1-10月平均 5.6%
※中国統計局データ参照

深圳市の最低賃金
2007年 850元
2008年 1000元
2009年 1000元
2010年 1100元
2011年 1320元 

消費者物価指数(CPI)は2009年一旦マイナスに転じたものの、昨年以降再び上昇し、今年は10月時点で既に過去に無い急激なインフレとなっている。また、最低賃金を見ると2009年を除き、毎年20%近く上昇している。
弊社の経営する日本食レストラン(以下当店)においても物価、人件費の高騰による影響を感じてきている。この激変する外的環境の中、どのように利益を確保すれば良いのか。それは業種を問わず在中企業の共通した喫緊課題である。そこで今回は、当店で実際に行って成果を上げた事例をお伝えしたい。見落としがちだが、その答えは意外にも自社(店)の中にあるものだ。

そもそも、利益を上げるにはコストを下げるか売り上げを上げるかの二通りしかない。
レストランの場合、コストを下げるには食材の仕入れ価格を下げるか、商品価格を上げる、などが考えられる。
しかし、物価上昇が避けられない状況下で、仕入れ価格を下げるのは限界がある。商品価格を上げることで原価は下がるが、顧客は価格に敏感なので、価格調整は慎重に行わなければならない。大幅な値上げは顧客離れを引き起こす可能性が高いので、事実上不可能である。

そうすると、必然的に売り上げをアップさせる方法を考慮していかなければならない。
当店が行い成果を上げたのが下記の2点だ。

1.ラストオーダー時間を30分延長

深圳のショッピングセンターは大体どこも夜10時30分で閉店する。
飲食店もそれに合わせ10時前には閉店準備に入る。
筆者自身1週間調査をしてみたが、2日に一度はラストオーダーを過ぎてからの来客が数組あった。対応できる場合はお通ししていたが、明らかに機会ロスがあると考えた。
また、その駆け込み客の方に話を聞くと「この周辺で10時を超えて入店できる日本食レストランがない」とのことであった。
実際30分だけの延長だが、驚くほど売り上げ貢献に繋がった。
それまでは販促に力を入れていたが、コストが掛かる上に思った成果が上がらないこともあった。しかし、この方法だと従業員のシフトを工夫すれば別途コストが掛かることはない。

2.商品のお勧め方法を改善

注文皿数を増やすことは客単価を押し上げ、売り上げアップに繋がる。それには、当店で根付き始めていたお勧め文化を更に強固なものにする必要があった。ただ、従業員の入れ替わりが激しい中国の飲食業でこの文化を維持していくのには人に頼る部分が大きい。そこで、オペレーションの仕組みで解決する方法を考えた。そして、その答えは意外にも別の問題解決への取り組みから得られた。
 
当店では、顧客から食後のアンケートを頂いている。ある日、データを分析した結果、提供時間に対する不満が増加していた。そこで、すぐにどうして提供時間不満に繋がるのか原因を分析してみた。
その結果、顧客が注文して5分以内に最初の料理が出て来ないと、空腹感を満たす事が出来ずに一気に提供時間に対する不満が高まる事が分かった。

逆に「お通し」のように、すぐに提供できる料理をまずは一品でも提供できていれば、メインの料理が多少遅くてもさほど提供時間に対する不満には繋がらない事も分かった。
全体の調理時間を改善することも考えられたが、先ほども述べたように特にここ中国の飲食業では離職率がかなり高いので、その都度改善していては埒があかない。

そこで、「お通し」系のすぐに準備できる商品で顧客満足度の高い商品を探したところ、条件を満たす商品が2点あった。キムチと枝豆である。早速試してみることにした。
顧客が来店しお茶をお持ちすると同時に、キムチと枝豆もお持ちし、「いかがですか?」と一言加えるだけだ。すると思惑通り提供時間に対する不満が解消された。着席してすぐに召し上がって頂けるので、一時的に空腹を満たして頂けたのだ。

そして、思わぬ副次効果も生み出した。
この両商品の人気が爆発したのだ。出数が一気に10倍以上になり、結果、客単価を押し上げ売り上げアップに大きく貢献することになった。それまでのように、顧客が注文する時点でお勧めを始めるのではなく、最初からお勧めしていく。言わば攻めのお勧めが功を奏した。
当初この方法を実行した時、従業員からは反対の声が上がった。
「キムチ、枝豆は元々高いから売れない。方法を変えても同じだ」
拒否反応を示すのは予想していたが、「とにかくやってみよう」と始めさせた。
まず、お勧めリーダーを選定した。そして、スタンバイ時間を含めたオペレーションを改善し1ヶ月試した。結果は予想をはるかに上回るものであった。
2ヶ月目、お勧め数を従業員で競わせた結果、更に出数が伸びていった。
今ではこの両商品は当店の出数1、2位であり、仕入れコスト、人件費の高騰をカバーできるくらい貢献度が高くなった。

深圳でもここ数年、コスト高騰による飲食店の倒産が目立ってきた。
現在当店が入るショッピングセンター付近にも多くの飲食店があるが、入れ替わり立ち替わりが激しい。ただ、今後もコストが高騰することは目に見えているので、我々はその環境変化に適応していかなければならない。「仕方ない」の一言で片付けるのは簡単だが、そうすれば淘汰されるのを待つのみだ。企業は存続し続けなければならない。我々は常に小さな改善、大きな成果を考えなければならないが、その答えのヒントは「自店の中にある」。

著者紹介

村上友治氏
元威凌克餐飲(深圳)有限公司 火間土海岸城店 店長

村上友治氏

1976年和歌山県白浜町生まれ、兵庫県淡路島育ち。
大学卒業後、3年間日本で働いた後退職。2003年に中国西安西北大学へ語学留学。
その後、雲南省昆明と四川省重慶でホテル営業マンとして日系企業営業を担当。
2008年ベンチャー・リンク深圳に店舗管理マネージャーとして入社。
毎日の刺激的な変化の中で揉まれながら、
これからの中国を担う人材育成のために奮闘中。

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