お見合い番組を「生活の悩みを解決する番組」と位置づける江蘇テレビ 【MATSU氏@中国・台湾】

番組オープニングのセリフが急に変わった

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以前ご紹介した南京・江蘇テレビの超人気お見合い番組「非誠勿擾」
オープニング。舞台に登場した司会者の孟非が、「ご覧頂きありがとうございます。BBK音楽携帯電話提供の非誠勿擾、皆さんこんにちは、私は司会者の孟非です。」と挨拶するのだが、ある時期を皮切りに、セリフにある言葉が追加された。「ご覧頂きありがとうございます。

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広電総局の通達

江蘇テレビ

ある中国のテレビ局スタッフに聞いた。
回答:「これは広電総局のお達しに、江蘇テレビが反応した形なんですよ。」
中国のメディア界を象徴するような回答を得た。 広電総局というのは中国の部署の一部分、主にテレビやラジオなどメディア関係の管理にあたる部署だ。日本では「国家ラジオ映画テレビ総局」と訳される。湖南テレビの人気歌謡番組「快楽女声」も広電総局からの通達を受け、1年間の放送停止処分を喰らった(処分の理由は明らかにされず)。

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他に「文化部」というのがあり、この部もマスコミでの表現に対してチェックを入れる。私が中国テレビ局スタッフと話しをする際、例えば、表現についての話題になると必ずと言っていいほど出てくるのが「広電総局」「文化部」という単語。彼らは、これらの部署からのチェック、監査を気にしているのである。

テレビ局と広電総局の競い合い

JSBC

江蘇テレビの番組にセリフが追加されたのには、次のような背景がある。
「広電総局が『限娯令』というものを通達した。『ゴールデンタイムの娯楽番組は放送時間の規定を超えてはならない』というもの」つまり、江蘇テレビは人気番組「非誠勿擾」を、娯楽番組の位置に入れないために、オープニングで「日常の皆さんの悩みを解決する番組ですよ!」と司会者が宣言している。局にとっては、中国でもトップクラスの視聴率を誇る番組の放送時間を制限されてはたまらない、まして、放送停止の処分でも喰らってしまえば大打撃となる。そこで、広電総局の通達に呼応した形で、抜け道を狙い文言を入れたということだ。生活の悩みを解決する・・・いわば、「お見合い番組は、健康番組や生活の知恵を扱うような番組と一緒なんですよ」と、宣言した、という訳だ。

なぜ処分されたのかは出てこない

放送局

日本で放送を管轄するのは総務省だが、放送内容に対し、「放送禁止」などの処分を一発で浴びせるというのは希有である。広電総局が「Aという番組に放送停止の処分を下した。」と発表はしても、「なぜ処分をしたか。」ということはほとんど出てこない。だから関係者の間でも憶測が飛び交う。湖南テレビの快楽女声は、「歌手志望の一般参加の女性たちがステージで歌い、投票によって勝ち上がっていく」スタイルの番組で、中国ではトップクラスの人気を誇る。放送停止のニュースは中国の歌謡ファンに衝撃を与え、日本でも一部報じられたほどだ。ではなぜ「処分を受けたのか?」・・・放送の中で、不適切な発言があったのか?たしかに「生」放送で、広電総局の事前チェックを受ける余地がない。しかし、放送を考えるに、司会者は中国国内で信頼感、安定感ともに高く、問題発言をするとは思えない何炅と汪涵の二人。

だから憶測は飛び交う

テレビ局

はっきりと発表されたわけではないが、一部で囁かれたのは「放送時間を勝手に延長したから・・・」では放送時間の延長だけで重い処分が成されてしまうのか。ある関係者の憶測は「中国は『投票』というシステムを嫌う。『快楽女声』は投票だけで上がっていくという国にとっては好ましくないスタイルが確立され、それが視聴者の支持を受けている。理由を付けて、番組を崩したかったのではないか」 そして、もう一つの分析、「国は、圧倒的多数が支持する『スター』を作りたくない。なぜなら『スター』の一言によって、民衆心理が一気に動いてしまう恐れがあるから」 と憶測は飛び交うが、理由の真相は分からないままだ。

ツボさえ押さえてしまえば

テレビ局2

「中国は表現に対して何と規制が多いことか!」と思われた方もいるかもしれない。では逆に「日本はテレビの表現がそれほどに自由か?」私はそうは思わない。むしろ日本の方が不自由ではないかと思えることすらある。毒舌家は次々と姿を消し、昨今、生放送を担当するのは、平坦さ、無難さを兼ね備えた司会者ばかりだ。日本では、表現規制の基準が明確ではない分、「どこから火の粉が上がるか分からない」という全体的な緊張感がある。反面、中国は、規制のかかるポイントがいくつかあるものの、それをクリアしてさえおけばあとは自由、といった雰囲気だろうか。日本では方々(ほうぼう)に気を使うが、中国は広電総局とメインスポンサーに対してのみ気を使う・・・。

面白さとリスクは表裏一体

編集

江蘇テレビの非誠勿擾・・・、冒頭に一句追加されただけで、番組の放送内容、雰囲気は変わっていないように見える。面白さを削り落とさないよう更に綿密なチェックが行われているのだとスタッフは言う。「面白み」と「危険性」は時に表裏一体。日本のテレビ番組が、徐々に面白くなくなっているのは、危険性を落としていった結果である。
「このお見合い番組は、娯楽番組ではなく、皆さんの悩み事を解決している番組なんです!」そう言っておきさえすれば・・・みたいな司会者、孟非のたくらみを感じ取ってしまうのは私だけだろうか。

著者紹介

Matsu

テレビ司会者・番組プロデューサー

Matsu

台湾のテレビ局で放送の食をテーマにした旅行番組「大口吃遍台灣(大口吃遍世界)」のMCを務める日本人テレビ司会者、番組プロデューサー。
本島の東西南北、金門、馬祖、蘭嶼、緑島、小琉球等を食べ歩き、「食の風景」を伝えている。
ロケでは、台湾のみならず、中国、アメリカ、カナダ、日本なども訪問。
番組は、国際チャンネルを通じて、香港、シンガポール、マレーシア、マカオ、ベトナムなどアジア6か国、地域でも放送。
現在は、テレビ番組製作の傍ら、司会、執筆、講演なども行う。近著:「大口吃遍台灣〜タイワングルメの旅」(四塊玉)。

番組出演:「WTO姐妹會」(八大第一台)/「聚焦360度」(年代新聞台)/ 「台湾ミュージアム」(台湾国際放送ラジオ)/「大台北城」(緑色和平電台)/「キッチンスター」(浙江テレビ)/「今天吃什么?」(大連テレビ)など。座右の銘:做最壞的打算,盡最大的努力(最悪の想定をして、最大の努力をする

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