女性の働きやすさとバランスのこと 【小尾春氏@ベトナム】

ベトナムで仕事をしていて、時々強く感じることの一つに女性の活躍がある。
もう10年も前になるが、ベトナム留学から帰ってしばらくした後、バングラディシュを訪れた。首都のダッカでホテルにチェックインすると、受付は男性。市場に行けば、食材を売るのも買うのも男性。外を歩く際、洋服よりも民族衣装を着た方がいいよと友人に言われて買いに行くと、女性用の衣装なのに売り子はやっぱり男性。外を歩いても、女性の姿があまりに少ないことに驚いた。イスラム教等、その国の背景や理由があり、また10年経った現在状況は変わっているかもしれないが、これだけ女性が外に出ない国で外国人女性が留学したり働いたりするのは、勇気が要るだろうな等と思ったものだ。

改めてベトナムを振り返ると、女性の働く姿、外出する姿が普通に見られる。市場や道端で働くのも買い物をするのも、市場に野菜等を売りに来るのも、女性がとても多い。どこへ行っても女性が働いていて、会話ができる。私は留学中、地方の奥地等に出かけていくことも多かったのだが、外国人であるにも関わらずそういった場所に臆せず行けたのは、これだけ女性が活躍している社会だからだったかもしれない、とバングラディシュから帰ってきて思った。そんな中でもバングラディシュやもっと西方の国々で活躍する女性も多いわけで、それは本当にすごいことだと思う。また、そういう意味で、東南アジアの国は、女性にとって行きやすい国なのではないかと思う。

ベトナムの会社で働いてみると、更にその活躍ぶりが見えてくる。私の働く会社ではスタッフの6割が女性、役員も女性の方が多い位。日系企業とのミーティングの際、日本側が全員男性、ベトナム側が全員女性ということもよくあった。またベトナムでは、企業によっては社長や会長が女性ということも珍しくない。

日本では、仕事と家庭の両立などの問題で、結婚や妊娠・出産を躊躇う女性もいるが、共働きが当たり前のベトナムでは、タイミングについて悩む人はいても、大抵が20代前半~半ばで一人目を産み、育てながら仕事も続けるのが当たり前だ。産休は3か月しかないが、皆出産ギリギリまで働き、その3か月を育児休暇に充て、そして復帰する。

その後の育児には、両親やお手伝いさんによる支援が欠かせない。また、子供に関する都合での欠勤や遅刻・早退も普通で、職場の同僚も当然のことと捉えて対応する。また、保育園や幼稚園に子供を通わせるようになると、日本ではその送り迎えで綱渡りのような苦労をすることが多いものだが、ベトナムではお手伝いさんに迎えに行ってもらった後職場に来てもらい、しばらく職場で遊ばせておいて、勤務時間終了と同時に子供と一緒に帰宅する女性スタッフも普通にいる。職場で時間に余裕があるスタッフが子供をあやしてあげたりするのもよくある風景だ。

こういう環境で仕事をしていて、職場の雰囲気が緩くなってしまうことは否めない。仕事中は集中力と責任感を持って働く、ということをなかなか徹底させられないし、仕事の質もそれなりになってしまう面はあり、どう対応していくかはいつも自分の課題だ。しかしその一方でいいなと思うことは多く、特に女性として働きやすいな、と感じる。また私自身、目からウロコというか、肩の力が抜けた部分が多い。育児と仕事との両立は難しいと心のどこか思っていたのが、案外やり方次第なのではないかと思うようになったことや、プライベートと仕事のスケジュールを区別せずに一緒に管理するやり方等は、私の場合ベトナムで学んだように思う。

どんな環境も完全ではなく、ベトナムを相手に働いていると日本の職場の良さも改めて実感する。集中力・プロ意識の高さ・おもてなしの精神。この辺りはベトナム人が日本に来ると必ず感心する点だ。一方でベトナムという国を知るに連れ、頭が柔らかくなったり、肩の力が抜けたりする。海外で働いたり、異文化と接触して良かったと思う瞬間だ。

著者紹介

小尾晴(おび はる) 旧姓 大村
サイゴン証券株式会社 Director 兼 日本ビジネス開発部部長

小尾春氏

1973年石川県生まれ。
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。大学院在学中にハノイ国家大学に留学。
農村開発調査コンサルタントとしてJICAやJBICの案件に参加後、日本アジア投資株式会社に勤務、ホーチミン市に赴任。
2007年よりベトナム最大の証券会社であるサイゴン証券株式会社に当時唯一の外国人スタッフとして勤務、日系顧客を担当。
現在は退職し日本に帰国、通訳として活動中。

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