「南京の男はすべてスキンヘッド!?」は番組のネタ 【MATSU氏@中国・台湾】

南京江蘇テレビ

孟非(モンフェイ)と楽嘉(ラーチャ)・・・。南京江蘇テレビの人気男性司会者だ。この二人には共通点がある。それは「スキンヘッド」(光頭)だということ。今や中国の超人気番組となった「非誠勿擾(フェイチェンウーラオ)」という番組に、この二人は出演している。私が初めてこの番組を見た時、二人ともが丸坊主の男性司会に「ヘンなの?」と思った。しかし、見ていくうち、彼らのトーク力、掛け合い、番組内容の面白さに引かれていった。

江蘇テレビの人気番組「非誠勿擾」

日本、台湾ではほとんど見ることはないが、中国には「相親節目(お見合い、恋愛出会い系番組)」が多い。上海東方テレビ「百里挑一」、浙江テレビ「愛情連連看」、湖南テレビ「我們約会吧」など・・・。その数あるお見合い番組の中で、最も高い視聴率を誇るのが南京・江蘇テレビが放送する「非誠勿擾」だ。「非誠勿擾」と言えば同名の映画(葛優、舒淇主演/日本名『狙った恋の落とし方』)が中国ではヒットしたが、テレビ版「非誠勿擾」は、スタジオ収録のお見合い番組。スコットランドの「Take me out」という番組様式の権利を買い、司会者や登場する若者が中国人である。
24人の女性が並んだスタジオに一人の男性が登場し、自己紹介、自分を紹介するVTRを見せる。各女性の手元にはスタート時には「青」が点されているランプがある。VTRの過程で「気に入らない」と判断したら「赤」に変える。24人のランプが全て赤となった時点で男性は強制退場。3本のVTRが終わった段階で、台上の女性で「青」ランプを残している女性がいれば、今度は男性に選ぶ権利が与えられる。

スキンヘッドの孟非と楽嘉の掛け合いが見どころ

スキンヘッド

中国の男女が何を基準に異性を選ぶのか、どのような考え方を持っているのか、結婚観・・・など、この番組から学べるものが多い。その中で、私が最も注目するのは、男性司会者の孟非だ。落ち着いた司会ぶりで、男性1人、女性24人、解説者2人という大所帯のキャストの話を、短時間でそれぞれまとめていき、時には笑いに、時には感動に変えていく。少ないキャストの場合、台本通りに進めていけば事は足りるということもあるが、キャストが多い場合、台本ではカバーしきれない。司会者の技量、特に「アドリブ力」が試される。40歳前後という年齢の孟非だが、かつては、印刷工やスポーツ記者として働いていたことがあるという。「南京零距離」という報道番組のキャスターを経て、「非誠勿擾」に抜擢、幅広い経験から来る話の含蓄が深い。何より、司会進行の際のリズム感。リズム感はトレーニングや経験のみで養われるものではなく、本人の感性に依るところが大きい。
「非誠勿擾」のもう一つの核は男性解説者、楽嘉だ。心理学、色彩研究家という肩書きを持っているが、番組でも、台上の女性、男性の考え方に対して鋭い分析を入れる。また、進行役である孟非の軽妙な司会に、茶々も入れ、この掛け合いが番組の一つの名物となっている。

楽嘉に騙されてか、二人の人気にあやかってか

光頭

孟非、楽嘉の共通点・・・・。二人とも「光頭(丸坊主)」であるということ。「南京の街を歩く男性はすべて『光頭』だ」と、かつて楽嘉は番組でジョークを飛ばしたことがある。中国各地から相手を求めて男性陣が参加するが、楽嘉の言葉に騙されてか、二人の人気にあやかってか、あえて丸坊主にしてくるという男性もいる。南京=光頭、というジョークが受けるのも、二人が江蘇テレビの人気番組の大黒柱であり、「非誠勿擾」が、江蘇省のみならず、中国の人気番組になったという背景があるからだ。

よくしゃべる一般人

老公看你的

楽嘉が出演する「老公看你的」を参観した。この番組も江蘇テレビの人気番組。中国では観客を入れた公開収録番組、一般参加型の番組も多い(歌番組なども)。若い夫妻が4組出場し、妻がポイントを掛けながら、夫が各ゲームに挑戦し、どの夫妻が高得点を上げられるかを競うものである。
中でも目を引いたのは、登場する夫婦....特に嫁の方がしゃべるのなんの。それも、理路整然と。司会者とも対等に。参加する夫妻は面接で選ばれ、たしかに、よく喋る方が採用されているのだろうが、仮に日本に置き換えた時に、芸人でもない一般女性が、あれだけきっちりと話すことができるだろうか。江蘇テレビのスタッフに「あの夫婦は事務所に属しているのか?」と聞いてみたが「純粋の応募してきた一般人」だと言う。日本では「関西のおばちゃん」が時折、インタビューなどでおもろいことを言うが、彼女らも「事務所に所属してセレクションされた人」というパターンが多い。中国では、一般参加のはずの女性達のトーク力が秀でている・・・これは「非誠勿擾」とも共通する。緊張感を感じさせるどころか、1回の番組出演から人気が出て、タレントまで押し上がっていく人間もいるという。一般人がテレビでも堂々としているその背景は何なのだろうか。「中国は人口が多い・・・分母が多いからそういう人も出てくる」という理屈だけでは推し量れない根本的な理由があるように思える。

鴨血粉丝湯よりも湯包だったかな

湯包

江蘇テレビのビルは新しく、社内の1階部分にスターバックスが入っている。番組出演者、スタッフも打ち合わせに使っている。江蘇テレビの記者とは、そのスターバックスでコーヒーを飲んだが、「せっかく南京に来たのだから」とスタッフ御用達の食堂を案内してくれた。出てきたのは、南京名物、鴨血粉丝湯。「南京はそんなに特徴のある食べ物はないんですが、唯一紹介できるのがこれです・・・」記者は謙遜気味に紹介してくれた。台湾でもそうだが、鴨から出るダシは深みを持つ。私は鴨血の臭みを受け付けなかったが、スープの味わいが深かった。
しかし、私が気に入ったのは、鴨血粉丝湯と一緒に出てきた湯包。溢れる濃厚な肉汁。凝縮された旨さ。肉の甘み・・・。たまらない旨さ。江蘇テレビから徒歩3分。スタッフ達が簡単な昼食、夕食で利用する店だが、記憶に残る味だった。

ポイントはセキュリティ管理

相親節目

中国では人気絶頂の相親節目だが、今後も、同様に続いて行くのだろうか。一般参加の番組はリスクを伴う。それは、プライバシーとセキュリティの問題だ。参加者の個人情報がテレビで堂々と流れると、時に、番組に登場した一般参加者が犯罪に巻き込まれるケースが出る。或は、収録後、放送後に何らかのトラブルがあり、放送(再放送)ができなくなることだってある。かつては日本にも一般参加の番組が多かった。減ってきた原因の一つは、やはりセキュリティ。一般人を登場させるよりも、事務所経由の芸人を連れてきた方がリスクが回避できる。台湾でも、一般人や学生を参加させた番組はあるが、討論系、歌番組などが多い。

南京に行く前に丸坊主にしちゃおうか

南京

一般人参加番組を見ると、その国の雰囲気が見えてくる。特に「冗談のツボ」。「こういう冗談は使えるんだなぁ」「この言い方だと笑いが取れるんだ」とか。私の視聴者としての実感は、台湾の方が表現に自由度が高く、自由な分、外国人である私には時に理解できない話の流れも生まれる。中国では、話がテーマに基づいていて、自由度は狭いが、外国人でも理解できるシンプルな流れができ上がる。実は、私は南京に行く前に、丸坊主にするかどうか迷っていた。江蘇テレビのスタッフへの軽い受け狙いを目論んで。まあ、結局、する勇気もなかった。「ウケたからって何なんだ」と思っちゃった。一旦、思っちゃったら、できないわ。

著者紹介

Matsu

テレビ司会者・番組プロデューサー

Matsu

台湾のテレビ局で放送の食をテーマにした旅行番組「大口吃遍台灣(大口吃遍世界)」のMCを務める日本人テレビ司会者、番組プロデューサー。
本島の東西南北、金門、馬祖、蘭嶼、緑島、小琉球等を食べ歩き、「食の風景」を伝えている。
ロケでは、台湾のみならず、中国、アメリカ、カナダ、日本なども訪問。
番組は、国際チャンネルを通じて、香港、シンガポール、マレーシア、マカオ、ベトナムなどアジア6か国、地域でも放送。
現在は、テレビ番組製作の傍ら、司会、執筆、講演なども行う。近著:「大口吃遍台灣〜タイワングルメの旅」(四塊玉)。

番組出演:「WTO姐妹會」(八大第一台)/「聚焦360度」(年代新聞台)/ 「台湾ミュージアム」(台湾国際放送ラジオ)/「大台北城」(緑色和平電台)/「キッチンスター」(浙江テレビ)/「今天吃什么?」(大連テレビ)など。座右の銘:做最壞的打算,盡最大的努力(最悪の想定をして、最大の努力をする

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