ベトナム人の「食」のこと【小尾春氏@ベトナム】

第7回 ベトナム人の「食」のこと

 夏の香港に、 ベトナム人の同僚2人と出張に行ったときのこと。

訪問先は香港に支店のある日系企業だった。
仕事を終えて、「是非、食事でも。」ということになり、本場の中華をごちそうになった。
とても美味しかった。翌日はベトナムに帰る予定で、仕事は無事終了した。

…と思った翌朝。

ホテルの朝食会場に同僚2人が現れない。

「どうしたの?」と部屋に電話すると

「2人ともお腹をこわした。 出発時間まで部屋で休むからそっとしておいて。」
さらに尋ねると、「
だって、昨夜の食事は冷菜ばかりで温かいものが出なかったじゃないの!おまけにお肉ばかりで野菜がない。あれでお腹をこわさない方がおかしい。ハル(筆者)は何ともなかったの?」

改めて、昨夜のメニューを思い出してみる。
確かに肉中心で、かつ冷菜の盛り合わせのようなものが多くて、スープのような体の温まるものは出なかったような気がする。

しかし夏の暑い時期だったこともあり、日本人の私は何も問題に感じなかった。まだまだ修行が甘いようだ。

ベトナムの人たちは、温かいものと冷たいもの、体を温める食材と冷やす食材などをよく考えて、その時その時に合わせてうまく摂取しているようだ。

またベトナムは南国だけれど、鍋料理が充実している。
真夏であってもトマトやタマリンドで味付た甘酸っぱい鍋をご飯や煮つけと一緒に食べる。
ヤギ鍋、鶏鍋、スッポン鍋。鍋の種類も多様だ。

ベトナムに来たばかりの頃は、暑いのに鍋なんて食べるのかと思っていたけれど、慣れてくると美味しいし、暑い中で汗をかきながらいろいろな食材を摂ることが体にもいいことがわかってくる。

また、食事はお弁当であっても必ずスープが付くし、朝食でよく食べるフォーなども汁麺で、スープも残さず食べている。

そんな彼らが海外に、例えば日本に来て、様々な接待を受けて口にする不満は「体が温まらない。野菜が足りない。」

野菜が足りないと言われると、私たちはつい、サラダをたくさん頼めばいいのかな?

なんて思ってしまうがそうではない。

サラダもあってもいいけれど、炒めもの、煮物、スープなどあらゆる形で調理された野菜が必要なのだ。

そのためベトナム人との日本出張時、自由にお店を決められる時や、会食時に先方(日本側)から「何を食べたらいいですかね?」などと尋ねられる時は、私は鍋料理を提案して、かつ野菜をたくさん入れてもらうようにしている。庶民的だが、評判はとてもよい。

しかし、そんな機会がなくても、彼らが野菜不足の状況を放置しておくことはまずない。
スーパーから食材を買ってきて、ホテルの部屋にあるポットなどを利用して、料理をしたりしている。

ヌォックマム(魚醤)や唐辛子、小ぶりのレモンなどの調味料は当然母国から持参している。
そんなことをして、ホテルに迷惑をかけていないのか、備品であるはずのポットは使用不能になったりしていないのか、恐ろしくて追及できないが、自分たちのやり方で日々健康管理をすることは、彼らにとって当たり前のことのようだ。

しかし考えてみれば、最初の話に登場した同僚2人のうち、一人は13歳からアメリカに渡り、人生の半分以上をアメリカで過ごした後ベトナムに帰国して間もない女性だった。

服装などもベトナム人離れしていて、また言葉も英語の方が話しやすいようで、ベトナム語と英語を混ぜて話す。

そんな彼女でも、食生活のスタイルはベトナム式のままで変わらなかったんだなあ、と変に感心した。

しかし私だって、ベトナムに長く住んではいても温かいものを食べなくても平気だし、ベトナムの人たちのことを多少理解はしても同化はしていない。

結局どこに行ってもベトナム人はベトナム人のまま、日本人は日本人のまま、根本は変わらないのかな、と思う。

著者紹介

小尾晴(おび はる) 旧姓 大村
サイゴン証券株式会社 Director 兼 日本ビジネス開発部部長

小尾春氏

1973年石川県生まれ。
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。大学院在学中にハノイ国家大学に留学。
農村開発調査コンサルタントとしてJICAやJBICの案件に参加後、日本アジア投資株式会社に勤務、ホーチミン市に赴任。
2007年よりベトナム最大の証券会社であるサイゴン証券株式会社に当時唯一の外国人スタッフとして勤務、日系顧客を担当。
現在は退職し日本に帰国、通訳として活動中。

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