「シンガポール的生き方」【野瀬正一氏@シンガポール】

第2回弛まぬ成長のために走り続ける国。企業・個人にも通じる「シンガポール的生き方」

前回はシンガポールが管理された国でありながらフェアな環境を提供している点に触れました。
今回はシンガポールという国が根底に持つ価値観について少し掘り下げます。

シンガポールは大きさでいうと淡路島と同等、東京23区程度しかありません。
「島」ではありますが、日本の島国精神とは大きく違う背景と考え方がここにあります。

国が狭い為に国内産業というのはほとんどありません。
日本の国土が狭い、と言ってもシンガポールの比ではありません。
食品も資源も輸入に頼らざるを得ないシンガポールは、世界からそっぽを向かれれば、たちまち干上がってしまう弱い立場です。
幸いにも交通の要所としての港を持つシンガポールは、世界中から船や物を集めることができます。
それであればと、港をより自由に使わせることにより、他の国が喜んでシンガポールに物を運びお金を落とすという仕組みを作ることに成功しました。

次に金融、お金についてです。
貨幣経済が進み金融のオンライン化、国際化が進むにつれ、世界中をお金が自由に動きまわるようになりました。
お金を集めるのに広い国土は必要ありません。
シンガポールはいち早く金融機関や国際的な企業の誘致を進め、税の優遇策も用意し一大金融センターを作ってしまいました。
お金が集まれば、それは更にお金を生み出すインフラとなります。
今や世界で最も安定した銀行はシンガポールの銀行となり、世界中の資産家が安全のためシンガポールに資金を移しています。

こうなると勝てば官軍、弱小国にすぎなかったシンガポールの存在を、各国は無視できなくなります。
シンガポールは国として世界中の金融機関や国家にも資金を出し、国際的な地位を築くに至っています。
マレーシアから独立してからの道のりは、多くの書籍でも紹介されていますのでご参照ください。

さて、ここまで書いてシンガポールはすごい国だな、と思われたかも知れません。
実際そうなのですが、翻って日本はどうでしょうか。

日本という国は加工貿易によって繁栄した国と言えます。
石油などの資源は輸入に頼っています。
農業などの一次産業はある程度ありますが、それも輸入に頼っている部分が多い。
高度経済成長を支えたのは製造業をはじめとする輸出品による対価で、国内で消費されているものの多くは輸入品、つまり他国との関係で成り立っている極めて国際的な国なのです。

日本というと島国で他国を排除したがるイメージがあり、実際にメンタリティーとしてはそう言えますが、経済の実態はボーダーレスに他なりません。
国民が自覚する・しないに関わらず、世界中にさまざまな影響を与えています。
現に世界中で日本のパスポートは高く信頼されていますから、先輩達の実績は大きなものだったのです。
問題は今もこれからもその認識を持って国を維持していけるかどうかですが…。

シンガポールに話を戻しましょう。
特に興国の祖、リークアンユーを含む客家系の華人には、他国の良いところを積極的に取り入れようという貪欲さと、弱みを見せれば国家と言えどもすぐに危うくなるという強い危機意識の、両方が備わっています。
だからこそ徴兵制度による強い軍隊の維持、厳しい国内法の罰則といった前時代的なものも残しつつ、先進的な国家運営を続けているのです。

今、シンガポールが力を入れているのは、バイオ、科学、医療、知的財産など。いずれも国が小さくても世界をリードできる分野で、国家的な産業創出に余念がありません。
昨年開業したカジノが成功して観光客もまだ増えていますが、観光局は新しいものをまだ作っています。
常に弛まぬ成長を望むその姿は、さながら「シンガポール株式会社」と呼ぶにふさわしいでしょう。

小国ながら、何もないところから努力して成功をおさめた日本とシンガポール。
この二国は似ている部分も多いですが、政府および個人の意識は大きく差が開きはじめているように感じます。
日本の情勢が不安定となっている今、私たち企業と個人は、小さくても世界と対等に渡り合える「シンガポール的生き方」を目指す時代が来ているのではないでしょうか。

著者紹介

野瀬 正一氏
WCC SOLUTION PTE. LTD.代表

野瀬正一氏

シンガポール永住権保持者
早稲田大学卒業後、東京で飲食店経営や人材ビジネスなどに携わるも、ことごとく逆風に遭う。
時代の流れには逆らえぬとアジアに出ることを決意し、シンガポールに渡る。
現在はコンサルタントとしてシンガポールへの進出サポートおよび店舗開店支援、また実業としてレンタルオフィスや店舗経営などをおこなっている。
50社ほどのクライアントと日々シンガポールおよびアジアマーケットに挑戦中。

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