ユニバーシアード大会開催準備から学ぶビジネス【村上友治氏@深圳】

2011年8月12日から、
ここ深圳市で第26回夏季ユニバーシアード大会(国際大学生競技大会:公式サイトhttp://www.sz2011.org/)が開かれる。

世界4都市と争った結果、深圳市が開催地に選ばれた。
2008年北京オリンピック、
2009年ハルビン冬季ユニバーシアード、2010年広州アジア大会と、
4年連続で国際スポーツ大会が中国で開催されることとなった。

中国でこういった国際的なイベントが開催されると、驚くべき施策の数々が施行される。

北京オリンピック開幕式時に大きく報道されていた消雨ロケットを覚えてらっしゃるだろうか。
当時の天気予測では雨といわれていた。

しかし、国家の威信をかけていた政府は開幕式を晴天で迎えるため、消雨ロケット1000発を空に放ち人工的に天候をコントロールした。

また全世界に放映された北京中にあがっていた花火。
実はCG(コンピューターグラフィック)によるものだったということも大きな話題となっていた。

現在、深圳市内でも様々な施策が行われている。

そこには今大会を絶対に成功させ、
世界に向けて深圳市をアピールするという目標達成ための
手段を選ばない徹底した当時の当局による施策をご紹介します。

それらの施策には賛否両論あるが、
ビジネスの観点から学ぶべき点も多いのは確かである。
今回は大会開催に向けた治安、環境、交通、衛生関連の施策をご紹介させていただきたい。

①危険人物排除100日運動

深圳市は全国各地から労働者が集まる新移民都市と呼ばれている。
他の都市と比べても、流動人口の管理は徹底しており、また市内を巡監する警察、治安保安員も多い。
そのためか、治安は比較的良い方だ。
それでも2011年1月1日~4月10日に行われたこの施策で8万人もの危険人物を市内から追放したという 。

危険人物とは、精神病者、前科者、犯罪容疑者、不法滞在者、不法労働者等を指すと報道されている。
日本であれば人権侵害で世論が沸き立つであろうが、ここではそういったことは聞かれない。

この施策に関連し、2011年3月頃から市内で住民登録強化が通知されており、
筆者のマンションにも数回確認のため警官が尋ねてきた。

登録内容を確認した後、帰り際に彼が一言、

「登録は君一人だね。もし、検査で君以外の者が滞在していると発覚した場合なにがあっても知らないよ」と。

また、当社経営レストランの従業員宿舎が属する団地では警察主催の会議が開かれ当社の従業員も参加した。

そこでこう伝えられたという。

「もし、住民登録者以外の者が君達の宿舎に滞在が発覚した場合、理由を問わず全棟の住民を強制退去させる」

実際2010年広州アジア大会開催中、

「マンション内に不法滞在者がいる」

という理由で筆者の友人はマンションに入れなかった。 仕方なく彼はホテルに宿泊したと聞いている。 
 

②大会期間中の給料未払いなどによる民工の集団陳情禁止、違反者には刑事罰

これは各方面から

「法律無視、イメージダウン、抜本的解決方法にならない」

などの反発を受け、結局撤回された。

面白いのは同時に

「大会期間中、雇用主はいかなる理由があろうと給料の未払いを禁止する」

という通知も出ていることだ。

昨今の大きな社会問題である集団陳情は特に多くの工場を抱える広東省では労使双方の思惑もあり複雑化している。

政府も集団陳情による治安悪化を懸念しており、こういった施策もだされる。

今回はやむなく施行されなかったが、手段を選ばないという姿勢にはやはり目標達成への強い意志がうかがえた。

③深圳汚染改善プロジェクト

現在深圳市政府は大気、水質、騒音問題を環境3大改善項目として今大会に向け4.4億人民元(約55億円)を投じて改善プロジェクトを進行させている。

特に汚染が激しい水質改善のために、
市内20箇所に集中汚水処理センターが建設され、586箇所に環境質量観測所が設けられた。

筆者は商業中心部のマンションに住んでおり、
その畔には深圳河が流れている。

この河、とにかく凄まじい悪臭を放っている。 流れているのは水というよりヘドロだ。

初めて水中から気泡がボコボコ出ているのを見たのもこの河である。

対面には深圳一のショッピングセンターである万像城、
ルイ・ヴィトン、グランドハイアットホテルなどが隣接し、なんともいえない違和感がある。

大会期間中この周辺は多くの人出が予想されている。
現在この川沿いには環境改善の一環として観賞植物が植えられ公園が建設中である。

しかし、それだけでは抜本的解決にならないし、悪臭も消えないだろう。

苦肉の策の公園建設から環境問題に対する政府の苦悩を見て取れるが、
建設開始までの行動は速かった。

公園建設予定地には元々個人商店があったが、
大会開催が決定されるとすぐに強制立ち退きに遭った。

また、ここには海鮮レストランもあった。
筆者もよく通っていたが、現在は別の公園に姿を変えている。

汚水を直接河に垂れ流していたことが原因と聞いているので仕方ないが、
こちらも大会開催決定後すぐに立ち退きにあっている。

④車両ナンバープレート末尾別通行規制

これはナンバープレートの末尾数字が偶数か奇数かによって運転可能日も偶数日、
奇数日に限定されるという施策だ。

深圳では毎日平均600台以上の新車が販売されているといわれており、
慢性的に渋滞が起こっている。

この施策で60~80万台の車両(全交通量の25~30%)が減少すると報道されている。

また、企業、市民には期間中の運転は控える申請を奨励している。

どんな申請か定かでないが、積極的に政府の意向を汲む企業には何か優待策が与えられるのではないかと思われる。

また車の増加に伴い大気汚染も深刻化している。

中国人の友人から深圳市内では外で運動したら危険だ、
と言われるほど大気は汚染されており政府もこの問題解決に躍起になっている。

⑤衛生管理の強化

2011年に入り市内レストランの衛生管理も強化されている。
当社経営レストランでも4月に突然衛生検査が実施され、数項目の改善指示を受けた。

勿論、当社ではこの分野においては日頃より細心の注意を払ってきたつもりである。

しかも、そもそも開店からこれまで全く指摘されてこなかった項目で、
経営側からすると衛生上支障の無いような重箱の隅を突く指摘で困惑している。

検査後、検査官が一言、

「今回の改善指摘項目が改善されなかった場合、強制的に営業停止にする」と。

実際、あるショッピングセンターで昨日まで営業していたレストランが突然営業停止に追い込まれている。

著者紹介

村上友治氏
元威凌克餐飲(深圳)有限公司 火間土海岸城店 店長

村上友治氏

1976年和歌山県白浜町生まれ、兵庫県淡路島育ち。
大学卒業後、3年間日本で働いた後退職。2003年に中国西安西北大学へ語学留学。
その後、雲南省昆明と四川省重慶でホテル営業マンとして日系企業営業を担当。
2008年ベンチャー・リンク深圳に店舗管理マネージャーとして入社。
毎日の刺激的な変化の中で揉まれながら、
これからの中国を担う人材育成のために奮闘中。

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