自立心や自己責任の意識を育てる教育環境~高校編(2)~【池田 佳史氏@オーストラリア】

選択教科について述べたいと思います。

昨年、南オーストラリア州の教育システムが少し変わったのですが、総合大学(University)及び単科大学や専門学校(college)に行くには基本的に11年生(SACE Stage 1)と12年生(SACE Stage 2)を終えなければならず、そういう意味では10年生までが日本でいう義務教育だと言えると思います。

11年生では約10教科を選択し、12年生では4教科(一昨年までは5教科でした)を選択します。
選択教科については日本に比べてはるかに多いと思います。
学校によって違いがあり全て選択できるわけではないですが、日本の一般の高校にはないような教科が選択できます。
通っている学校で選択できない場合には、その教科だけを他の学校で受けることができるようになっています。
また一つの教科でも日本より細部にわたっており、将来の専門職に密着した内容となっております。

例えば、美術では、創作・ダンス・演劇・ビジュアルアート・音楽と、そして音楽でも作曲編曲・アンサンブル・テクノロジー・パフォーマンスなどより細かく分かれております。
ビジネスにおいても、会計・企業ビジネス・デザインテクノロジー・情報出版などに、保健体育では、児童・ホスピタリティー・保健・アウトドアエデュケーション・体育などに、社会では、アボリジナルスタディー・国内国際政治・歴史・経済・地理・法律・メディア・近代史・哲学・宗教・文化・観光・女性学などに、言語学においてはなんと20ヶ国語以上、理科においては、通常の物理や化学・生物・地学以外に農業・栄養学・心理学などが選択できます。
以上のことからお分かりのように、大学で専門的に学ぶ前段階として既に高校で学ぶことができ、大学に入ってもスムーズに進めるようになっております。

また、必修教科としてPersonal Learning Project (PLP) とResearch Project (RP) というものがあります。
PLPは将来自分の就きたい職業について調べ、その職業に就くにはどのような資格やスキルが必要なのか、どのような姿勢で臨まなければならないのかを調べて、レポートとして提出します。
日本の高校では机上の勉強としての教科選択だけで、将来のことを考えさせたりする機会が少なく、大学には進学したいけれど将来何になりたいのか、何がしたいのかをはっきりと言える高校生が少ないように思います。
RPは自分の好きなテーマ(例えばソーラーパワーなど)を選び、それについてリサーチをしてレポートを提出したり発表したりします。
また、各教科においては、レポートが何%、試験が何%、プレゼンテーションが何%と評価のウェイトが設定されており、合計100%で総合評価されます。こちらではレポートのことをアサイメント(assignment)と呼び、宿題(homework)とは違い、直接評価に関わってきますので重要です。
このように、既に高校の時から大学のようなスタイルで学んでいることが伺えます。

将来の仕事から進学大学の学部を選び、そのコースに必要な教科を選択するということで、11年生、特に12年生での教科選択は重要です。
SACEのシステムの説明会を行った後、本人に教科を選択させ、親と一緒に進路の先生と三者面談をします。将来どのような仕事に就きたいのか、そのための大学のコースを聞き、そしてそのコースに進むための必修教科およびSACEの課している規定の教科数(単位数)が足りているかどうかをチェックします。
能力的なことは日本ほど厳しくは言われませんが、11年生で悪い成績を取っていますと、12年生で選択させてもらえません。
その後、その選択で本人が責任をもって同意選択、そしてその選択において保護者が同意したという証明で先生の前で本人と保護者がサインをさせられます。
そして先生がきちんとその選択教科をチェックしたというサインをして教科選択は完了となります。
日本では進路において生徒の将来の仕事を考慮することは少なく、どこの大学および学部、そしてそれに対する能力(合格不合格の可能性)だけが進路相談で行われることが多いように感じます。
そういった意味では、日本のように“みんなが大学に行くから”と何となく大学を目指したり、大学の名前だけで選んで片っ端からその大学の学部を受験しまくるということはこちらではありません。
私は日本の予備校で働いたことがありますが、親御さんが子供に「○○大学がいいんじゃないの?」や「この学部がよさそうじゃないの?」、「この大学だと就職率がいいでしょ」というような場面に多々遭遇しました。
こういったケースはこちらでは非常に少なく、本人にきちんと将来のことを考えさせ、選択させ、そして責任を取らせています。

南オーストラリア州の州立大学(総合大学)は3校しかなく全て統一試験で、日本のように各大学学部における入学試験はありません。
難易度は日本の一流大学よりも低いですが、センター試験よりも高く、中堅大学の入学試験レベルのように感じます。
最後の試験は30%だけ考慮に入れられ(2年前までは半分の50%でした)、70%は学校の成績が考慮されるようになっていますので、学校の勉強さえしっかりしていれば難しい学部でも入学が可能です。
そういった意味では入るのは簡単です。ただ大学に入ってから卒業するのは難しいです。
この大学のことはまた後程書きたいと思います。

このように教科選択一つであっても、自己選択・自己責任の意識を育てているように思います。

※ SACE とはSouth Australian Certificate of Education の略です。

著者紹介

池田 佳史氏:Sports & Education Projects Australia Pty Ltd 代表
メールアドレス:sepapl@bigpond.com.au

池田 佳史

1972年大阪生まれ。
1991年オーストラリア・アデレードに家族で移住する。
親に頼らず、苦学の末オーストラリアと日本の大学を卒業し、両国の教員免許を取得する。
日本人補習校および現地の教員となるが、日本人留学生の実態を知り、2003年日本人としての誇りを教えるべく人格形成を重視した学習塾を立ち上げる。

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