自立心や自己責任の意識を育てる教育環境~高校編(1)【池田 佳史氏@オーストラリア】

まずこちらでは小学校が7年生までで、高校は8年生から12年生までとなっており、その中で8年生から10年生までをジュニア、11年生および12年生をシニアと呼んでいます。
大学や専門学校(カレッジ)に行く生徒は、この11年生(ステージ1)と12年生(ステージ2)を終えなければなりません。

オーストラリアと日本における教育システムは様々な相違点があります。
もちろん、全ての高校や大学に当てはまるわけではありませんが、オーストラリアのほうがより自立心を育てる教育環境にあると私は思います。
そこで、こちらの高校で自立心を育てる環境にあると感じられる点を、学校システムと教科の面について自分なりに述べてみたいと思います。

学校のシステムについては、まず教室の移動において、大学はもちろんですが、中学や高校でも生徒が主体となり教室移動を行います。
日本でも音楽や家庭科など教室を移動することもありますが、通常の教科においては教科担当の先生が教室に来て授業を行います。
しかし、こちらは先生が移動することはなく、生徒達自身が移動します。
些細なことかもしれませんが、生徒達が責任をもって行動しなければならず、大学と同じシステムを既に高校の時に取り入れていると思います。
これはあくまで一例ですが、後述する教科の選択や評価のシステムなどは大学とほぼ同じで、大学入学後も学習における大きな変化はなく、スムーズにスタートできると思います。

ベルが鳴って授業が始まってからは、生徒達の移動や外出はもちろん認められませんが、トイレやロッカーに忘れ物を取りに行く時などは、日本の場合先生の許可を口頭で得られれば許されますが、こちらは生徒手帳に外出理由を書き、許可のサインを先生からもらわなければ外出できません。
もし授業中に廊下を歩いている生徒を見つけると必ず理由を聞き、先生の許可をきちんと取っているかどうか調べるために生徒手帳みせなさいと尋ねるのです。もしなければ無断で外出したということになり、警告を受けます。

この生徒手帳ですが、日本のものに比べるとかなり大きく分厚いです。
社会人が使うような手帳がそのまま入っており、校則や年間行事はもちろん、日ごとのカレンダーが入っており、注意事項や計画、課題の提出日、試験日など書き込めるようになっています。
前述の外出許可や親御さんとの連絡、遅刻や欠席届もこの手帳に書き込むようになっています。
社会人になってからも対応できるよう日常生活の管理や計画を立てる上で役に立っているようです。

警告については、各学校において多少違いますが、例えば授業中警告(注意)を3回受けるとクールダウンタイムといって、教室の外に立たされます。
しばらくして戻されますが、次に警告を受けるとフォーカスルーム(謹慎部屋というのでしょうか)に送られ、厳しい先生の管理下で自習を行わなければなりません。
非常に悪い態度や言葉遣いの場合には、クールダウンタイムがなく即このフォーカスルームに送られます。生徒手帳にはその理由と先生のサインが書き込まれ、それを持って生徒はフォーカスルームに行き、管理する先生に渡します。
このことはコンピューターにデータとして入力されるので、どの先生もこのデータにアクセスすることができます。
週に2回このフォーカスルームに送られると校内謹慎となり、先生・生徒・親の三者面談を行い、謹慎中にペナルティーとしてやならければならないこと、そしてそれを破った場合の更なるペナルティーなど本人に確認させ署名させられます。
校内謹慎の次は自宅謹慎及び特別な施設に送られるというようになっており、教師側は感情的に声を張り上げて叱る必要もなく、淡々と規則に則って警告を与え、生徒はそれを守らない場合はどんどんと重いペナルティーを課せられるようになっています。
そこにはルールや校則、規則として一切の妥協はなく、いくら親御さんが菓子箱を持って頭を下げに来たとしても、罪やペナルティーが免除されることはありません。
こちらでは“take the consequences”と言い、自分のしたことは自分で責任を取るという自己責任の意識を育てているように思います。

避難訓練についてですが、面白いことにこちらは2種類の避難訓練があります。
1つは日本と同じように火事などの場合の避難訓練ですが、もう一つは外からの攻撃から身を守る避難訓練です。
非常ベルがなると、教師の指示のもとで一斉に速やかに教室に入り、教師は生徒の人数確認後戸を閉めて鍵をかけるのです。
不審者の侵入やテロなどの非常時に備えてのものなのです。
また、特に有名私立高校ともなると、校門から校舎までの距離が非常に長いです。不審者が入ってきても校舎にたどり着くまでに時間がかかり、その間に対策を練りアクションを起こすことができるということらしいです。
日本では個人単位から始まり国単位ですら、自分の身は回りの人達や他人が守ってくれるという無防備な意識が強く感じられますが、このような避難訓練を見ましても、自分の身は自分で守る、自分の国は自分達が守るというような強い意識が感じられるのです。

著者紹介

池田 佳史氏:Sports & Education Projects Australia Pty Ltd 代表
メールアドレス:sepapl@bigpond.com.au

池田 佳史

1972年大阪生まれ。
1991年オーストラリア・アデレードに家族で移住する。
親に頼らず、苦学の末オーストラリアと日本の大学を卒業し、両国の教員免許を取得する。
日本人補習校および現地の教員となるが、日本人留学生の実態を知り、2003年日本人としての誇りを教えるべく人格形成を重視した学習塾を立ち上げる。

コメント


認証コード2973

コメントは管理者の承認後に表示されます。