若者の自立心【池田佳史氏@オーストラリア】

自立心を育てるということは、自由にすることではないと思います。自立ということは、両親に金銭的に負担をかけないというだけでなく、他人に迷惑をかけず、責任や義務を果たし、地域や社会の一員として貢献することであると私は思います。つまり自由に自分の好きなことをしていては、自立心は育ちません。
“もう大学生なのだから”や“もう20歳だから”は関係ないと思います。肉体は嫌が上でも年をとっていきますが、精神は鍛えなければ成長せず、いつまでたっても子供のままになってしまいます。“頭が痛い”や“おなかが痛い”と学校を休んでヨシヨシしてもらえるのは小学校くらいまでではないでしょうか。また褒められたりチヤホヤされたりしなければやらないというのも幼児現象の名残ではないかと思います。自我を押し通そうと突っぱねることも、子供が足をバタバタと地団太踏んでいるのと同じように思います。
自立心を育てる一番手っ取り早い方法は忍耐ではないかと私は思っております。我侭は大敵です。

人間には行動を起こす際には必ず理由や目的があると思います。その理由や目的はできるだけ純粋なものであって欲しいと思います。そうでなければ、ただ自分がやりたいというだけの我侭になってしまいます。
例えば、アルバイトがそうです。何故アルバイトがしたいのかを学生は考えて欲しいです。アルバイトは決して悪いことではありません。働くことは良い経験にもなります。しかし、そこに“家計を支えるため”であったり、“自分の夢をかなえるため”であったり、正しい理由や目的があってほしいと思います。
私の恩師は常々「学生に持たすな、暇と金」と仰っていました。そのお金という魔物に飲み込まれないためにも、きちんとした目的が必要だと思います。そうでなければ、金遣いが粗くなったり、物欲に拍車をかけたり、悪い方向に進むことが多々あります。暇だからアルバイトをするものでもないと思います。また「○○をアルバイトで稼いで買った」という話を聞きますが、自分の欲しい物だけをアルバイトをして買うものではないと思います。社会に出たら、生活費その他もろもろを差し引き、残ったお金で好きなものを買うのが当然です。その観念がなければ、自分の好きなものやしたいことなどを優先してしまい、サラ金にまで手を出す羽目になってしまうように思います。
学生は勉強をさせてもらっている立場です。学業を優先させるのが当然ですし、お金を稼ぎたいということでしたら、まず家計を助けたり、学費や生活費を稼いだりということが先立ってもいいように思います。両親に生活費や学費まで出してもらい、自分の欲しいものだけをアルバイトして買うという観念ではいけないと思います。アルバイトをして稼いだお金を全て親に返せというわけではありませんが、そもそもそうあるべきだと思いますので、それぐらいの観念を持ってやって欲しいと思います。

上記のアルバイトでもそうですが、自分がやりたいことを押し通すために、学生はよく「やってみなければ分からない」や「経験しなければ分からない」とよく言います。しかし、大抵の場合が自分の好奇心や欲を満たすための言い訳や屁理屈の場合が多いです。本当の経験とは、ある目的や目標に向かって一生懸命努力をし、失敗や挫折も味わい、そしてそれを乗り越えて喜びを得てこそ、“経験”になるのではないでしょうか。それが理解されていなければ、やりたいことだけをするという我侭な考えや行動になってしまうように思います。
留学生においても、異文化の地に住みながら、自分にとって都合の良い、やりたい文化だけを学び、そうでないものはないがしろにしてしまうようになってしまいます。飲酒、喫煙、ドラッグ、刺青、セックスなどいろいろな誘惑があります。しかし、オーストラリアは飲酒も喫煙も18歳から大丈夫だからといってやるものではないと思いますし、たくさんの人が大麻や刺青をしているからといってやるものでもないと思いますし、つきあったらみんな同棲しているからといってやるものでもないと思います。克己心や自己規律というものがなければ、自分の欲望を満たすために「こちらの文化だから」という屁理屈をつけて肯定しようとしてしまいます。
日本を形成してきた伝統的な価値観や文化まで否定して、安易に西洋の文化を取り入れるものではないと私は思います。自国の文化を尊重できない人間は他国の文化を尊重できるはずもなく、逆に自分の我侭で汚しているだけになると思います。

学生の中には“やるべきことをする”ということを“成績さえよければいい”や“単位を落とさなければいい”と勘違いする生徒もいるようです。
なまじ成績がよかったり、能力があって傲慢な人間よりも、少々不器用で能力が他より劣っていても、謙虚であったり誠実であったりする人間のほうがよほど救われ、社会に貢献するものです。傲慢であったり不誠実であったりする人間は、考え方が間違っているために、社会に出ても他人に迷惑をかけることはあっても貢献することはありません。

若者は「今は昔と違うから」や「古臭い」などとよく言いますが、そっくりそのまま自分自身に問い掛けて欲しいと思います。親御さんや私の世代、おじいちゃんやおばあちゃんが過ごしてきた学生生活は、戦中戦後、高度成長期やバブル、偏差値社会など色々な社会的背景があります。しかし今の社会を考えますと、昔の人たちが送ってきた学生生活では到底対応できないことが分かるかと思います。コンパやアルバイトにかまけた学生生活を送り、刹那的な遊びやゲームにはまり、単位を落としているようでは、社会で通用するはずがないと思います。現代社会は、よりストレスの多い過酷な世の中になってきています。それに対応できるくらいの精神力、人間力、スキルや能力を身につける必要があると私は思っております。そして国際化が進む中、あらゆる面で留学して一生懸命勉学に励んだり、夢に向かって努力することはとても有効だと思います。

冒頭でも述べましたが、学生のうちは一にも二にも忍耐することが大切だと思います。
自分の欲しいものは何でも手に入れ、(自分の夢を除き)自分のやりたいことを何が何でもやり通しているようでは、忍耐力はつくはずがありません。
感謝の気持ちを持つどころか、自己欲に拍車をかけることになりかねません。たまには息抜きも必要だとは思いますが、留学した以上、その期間ぐらいは“たまには息抜きしたら?”と他人から言われるくらい努力をし、一旗揚げて欲しいと思います。

繰り返しになりますが、兎にも角にも忍耐、そして努力が学生時代には必要です。そうすれば自然と感謝の気持ちを持てるようになると思います。

学生一人一人が、社会の荒波の中で生き抜き、それぞれの分野で小さいながらも光を放ち、仕事を通して社会に貢献できる人材に育って欲しいと願っております。

著者紹介

池田 佳史:Sports & Education Projects Australia Pty Ltd 代表
メールアドレス:sepapl@bigpond.com.au

池田 佳史

1972年大阪生まれ。
1991年オーストラリア・アデレードに家族で移住する。
親に頼らず、苦学の末オーストラリアと日本の大学を卒業し、両国の教員免許を取得する。
日本人補習校および現地の教員となるが、日本人留学生の実態を知り、2003年日本人としての誇りを教えるべく人格形成を重視した学習塾を立ち上げる。

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