高校長期留学事情(1)【池田 佳史氏@オーストラリア】

以前より日本人の留学生の総数は減りましたが、やはり留学生のほとんどが短期留学および交換留学で、長期留学(高校卒業プログラム)はほとんどいません。

私は留学生を対象とした塾(一燈塾)を開いており、その生徒達の高校の卒業式に出席してきましたが、過去10年で私の塾生以外に卒業生として式に出席していたのはたった1人だけでした。

海外でチャレンジしたいという学生が減ってきていると同時に、海外に子供を留学させる勇気のある親御さんも少なくなってきているように感じます。
また少子化で子供が1人しかいない場合は尚更のことだと思います。

また、留学にはお金がかかりますから、経済状況から短期や1年くらいならいいけれど長期となると難しいというのも否めないのかもしれません。
しかし、それだけではなく、留学自体が続かないということもあるように思います。
この留学が続かないという大きな理由として私は2つ挙げられると思います。

その1つの大きな理由として、勉強についていけないということが挙げられると思います。
長期留学の場合はメインストリーム(現地の生徒と一緒に授業を受ける)に入る前に最低30週間(通常40週間)は集中英語コースで英語を勉強しなければなりません。

通常日本の義務教育である中学校を卒業後してきますと、年齢からするとこちらの10年生に入学するのですが、
たった1年足らずの英語集中コースを受けたあと翌年には受験体制であるSACEのステージ1、11年生になります。

簡単な日常会話くらいならできるようになっているかもしれませんが、
英語で数学や他の理系教科を受けなければなりませんし、文系教科でのエッセイやリサーチ、プレゼンテーションなどをこなすには大変な努力が必要です。

その上、進路相談をして教科選択をしますが、将来の具体的な夢や希望する職種がない留学生が多く、言われるがままに教科選択をしてしまい(特に語学のハンデが少ないとされる理系教科)、結局単位を落として挫折してしまうというケースです。

単純計算ではいきませんが、こちらでは10年生までがジュニア、11年生と12年生がシニアと呼ばれているように、いわゆる11年生と12年生の2年間が日本の高校に値し、この2年間で日本の高校3年間分を終わらせます。

またこちらは1学期10週間の4学期制で、学期休みが2週間(夏休みは6週間)の休みがあります。
新学期は1月終わりから始まり、12年生の最終試験は10月末からなので、実質2年もありません。
難易度とスピードの上がり方が日本よりも激しいです。

何とか11年生を終えることができましても、12年生は非常に難しく、13年生(留年ということで、もう一度12年生の勉強をします)を強いられる生徒も少なくありません。

また、我々のように英語が母国語でない人間には、読むにしても書くにしても、ネイティブスピーカーよりはるかに時間がかかってしまいます。

しかしそれを留学生自身が認識をせず、現地の学生と同じような生活を送ってしまう留学生が多いです。更に悪いケースでは、現地の学生と交わることなく、“英語が難しい”という理由で、他の日本人留学生と交わり、英語能力は上達せず、結局傷口を舐め合って不良化してしまうというケースです。

上記の学習面での理由の他に、生活面での問題も拍車をかけるようです。
悪いホストファミリーに当たって、留学生活が台無しになってしまうということもありますが、
日本の留学生の多くは“ゲスト”という感覚が強く、何でもしてもらうことが当たり前のように思って、
またその親御さんも“ホームステイ代を払っているのだから”という感覚があり、問題が起きることが多々あります。

こちらの人たちはホームステイ代をもらっているとはいえ、家族の一員として生活をすることから、手伝いもさせますし、注意をしたり叱ったりもします。
しかし日本で生活をしていたように生活をするためか、ホストの手伝いをしなかったり、自分の部屋を掃除しなかったりする日本人留学生が多いです。

また、こちらにはこちらの生活スタイルがあります。
例えば、こちらでは水が貴重ですので洗濯は週一回が原則です。
下着類は別にして、トレーナー、長袖のシャツやズボンが汚れてもいないのに一回袖を通すと洗濯に出したりする留学生がいます。

洗濯物すら部屋に脱ぎっぱなしで、そのまま置いてあるということもあります。
現地の人はシャワーを毎日浴びますが、3分から5分程度のもので、髪の毛を毎日洗うことは少ないです。
しかし、日本人留学生の多くは毎日髪の毛を洗ったり、長い時間シャワーを浴びます。

また、ホストの持ち物を我が物のように触ったり乱暴に扱ったり、食べ物でも自分の量をわきまえずに、ホストの分まで食べてしまったりする留学生も少なくありません。
ホストのいない間に勝手に友人を連れてきたり、異性を連れ込んだりということもあります。

結局はホストから注意を受けるのですが、ちょっとでも注意をされるとすぐに嫌になったり不貞腐れ、学校から帰ってもホストと顔を合わせたり会話をしたりすることもなく、部屋に閉じこもってしまい、夕食の時にしか顔を出さないとなります。

そしてホストと生活することが嫌になり、他の日本人留学生と外食をし始め、ホストが夕食を用意しているのにもかかわらず、
外から電話をかけて突然キャンセルしたり、夕食時に帰宅しなかったり、挙句の果てには夜に抜け出して遊びに行ったり、外泊にまでエスカレートし、ホストファミリーから出ざるを得ない状況にまで発展してしまいます。

こちらは18歳で成人とみなされますので、高校生であってもホームステイをする必要はなく、一人暮らしができます。

飲酒や喫煙、ギャンブルもできます。そのことから、他の日本人留学生とシェアーをして住む部屋を探し、結局毎日がパーティーのような生活を送り、学校にも行かなくなるという最悪な事態にまで陥ります。

一度、日本食レストランで働いている友人に忘年会に誘われて出席したのですが、そこには11年生の女子学生が2人出席しており、飲酒に喫煙とやりたい放題でした。

そのことを注意すると“もう18歳だから大丈夫”という答えが返ってきました。
またホスト宅の門限を尋ねると予想通り“友人とシェアーして住んでるから大丈夫”という返事が帰ってきました。

私が数学を教えていることを知ると“数学苦手なんですよ。
教えて下さいよ。
”と言ってきたので、“まず生活態度から正さなければならない。
このような生活を送っていて卒業できると思っているのか。
”と注意したところ、“もしだめだったら日本に帰るだけ”と答え、パーティー気分を害されて嫌になったのか、その場から離れていきました。

以上実際にあった具体例を述べましたが、あくまで1例であり、全ての日本人留学生がこのような留学生活を送るという訳ではございません。
ただ、学習面で挫折したり、ホストとの生活面で失敗をしたりして不良化しやすいということは否めません。

だからこそ、しっかりとした夢や志をもち、本来の“留学”の目的をはっきりさせる必要があるように思います。

著者紹介

池田 佳史氏:Sports & Education Projects Australia Pty Ltd 代表
メールアドレス:sepapl@bigpond.com.au

池田 佳史

1972年大阪生まれ。
1991年オーストラリア・アデレードに家族で移住する。
親に頼らず、苦学の末オーストラリアと日本の大学を卒業し、両国の教員免許を取得する。
日本人補習校および現地の教員となるが、日本人留学生の実態を知り、2003年日本人としての誇りを教えるべく人格形成を重視した学習塾を立ち上げる。

コメント


認証コード1365

コメントは管理者の承認後に表示されます。