オーストラリアと日本の大学事情(2)【池田 佳史氏@オーストラリア】

日本の大学では、先生方が学会等などで休講となることがよくあります。
私の行った日本の大学でも、事前の連絡がなく大学に行って初めて「本日休講」と掲示板に書かれているのを見て休講を知ることもしばしばありました。
しかし、こちらの大学では、私の在学中一度も休講がありませんでした。
たった一度だけ、休講ではなく教授の都合が悪いということで助手(チューター)の方が代理で講義を行ったということがありました。
こちらの大学では、第一回目の授業で、授業内容から担当の教授の方とチューターの方の名前、そしてそれぞれの質問受付時間帯などが説明されます。
選択した教科でもし自分が思っていたものと違っていたり、面白くない、ついて行けないなどで教科変更をする場合は、第三週目までに手続きをすれば可能です。

選択教科に関しましては、日本よりもこちらの大学の方が幅が広いように思います。
私の行った日本の大学では、24教科の選択教科の内、20教科選択しなければならないというように、“選択”とは言うものの半ば必修のような感じでした。
私の行ったこちらの大学では、日本の4年生で行うようなゼミがないので3年(学部によっては4年~6年)で卒業できるのですが、
前回のコラムで述べましたように、学年はあまり関係なく単位が満ちた時点で卒業となりますので、こちらの教科は“レベル”という表現をします。
例えば、私の理学部数学科に関して申しますと、合計72単位取得した時点で卒業ですが、
条件として必修教科を含めて数学分野の教科を36単位以上取得することとなっていました。
つまり極論を申しますと、半分は数学で後の半分は数学以外の教科でよいということです。
その他の条件として、レベル1の教科は21単位以上取得すること、レベル2は20単位以上取得すること、レベル3は24単位以上取得すること、となっていました。
このような単位構成から同時に2つの学士を取得することも可能です。

私の友人でも4年大学に行き、二つの学士を取得した人もいます。
日本ではまず二つの学士を同時に取得することはできないと思います。
同じ教科は2回までしか選択できず、2回落とした場合はその教科を二度と選択できなくなります。

教科の合否判定に関して、日本では最後の試験やレポートが100%であることが多いのですが、
こちらの大学は高校の時と同じように評価のウェイトが試験やレポートなどによって違い、合計100%で評価が下されます。
私は理学部数学科でしたが、ほとんどの数学の教科はレポート課題が10%で試験が90%でした。
そのレポート課題はレベル1は毎週、レベル2は隔週、レベル3は3週間おきに出されましたが、理系教科は試験のウェイトが大きいです。
文系教科は理系教科に比べて試験のウェイトが低く(教科によっては試験がない場合もあります)、エッセイやリサーチ、プレゼンテーションにウェイトが置かれているようです。

こちらの大学では、講義自体出欠を取られることはなく、出欠を取られるのは、チュートリアルといって演習の時間であったり、グループワークの時などで、
日本の大学によくある“出席点”というようなものは一切ありません。
教科によっては講義内容(板書)のノートも自由に閲覧できるようになっています。
とにかく実力さえ見せてくれればそれでいいという感じです。
ただなかなかそういうわけにはいかず、講義に対する出欠が自由な割には、欠席をする生徒はほとんどいません。
日本は出席点がある教科には生徒たちはよく出席するのですが、
そうでない教科は出席しないことが多く、試験の時だけ出てきて「こんなに受講者がいたのか」と驚いた記憶があります。
試験に関しても、こちらの大学では講義の教室で行われることが少なく、大学のキャンパス外にある試験会場に行って試験を受けます。
10前後の教科の試験が一つの会場で同時に行われます。
試験監督が複数おり、自分の着席した席番号や学生番号を試験用紙に記入し、ベルとともに試験が開始されます。
試験中のトイレも2回までしか行けません。
まさに日本の入試のようです。
カンニングができるような状況ではありません。

日本では試験は講義が行われていた同じ教室で行われ、当日はなぜか後ろから席が埋まっていき、机や壁に色々と書き込んでカンニングをしている生徒も少なくありませんでした。
また、こちらの大学では50点以上が合格(50点以上65点未満が可、65点以上75点未満が良、75点以上が優)なのですが、
試験の結果が45点以上50点未満だった生徒は仮合格とされ、再試験のチャンスが与えられます。
ただし、演習の時間に80%以上出席し、レポート課題も80%以上提出しているものとする条件付きです。
45点未満だった生徒は再試験すら受けられず不合格です。
この仮合格が認められるのは卒業時までに3教科までで、それ以上だと卒業ができないことになっています。
日本では本試験で白紙で出して0点でも再試験を受けることが可能ですし、再試験は本試験とほとんど同じで(教科によっては全く同じ)、その解答すら試験前に出回ることもありました。
こちらの大学では過去の試験問題は図書館に保管されており、誰でも閲覧することができます。
ただ解答はなく試験問題だけです。
このようにこちらの大学はとてもフェアーで実力が問われ、努力しなければ卒業できないことがお分かりになるかと思います。
まさに世間で日本の大学は入るのは難しいが卒業は簡単、西欧の大学は入るのは簡単だが卒業が難しいと言われていることがよく分かります。

日本の大学では、これは私の行った大学だけで、しかも極端な例だと願いたいのですが、
ゼミは女子生徒しか取らないと言われた方や、ゼミ室に全自動麻雀卓を置いている方、

「私の講義は合計12回あるからその半分の6回以上出席したら可をあげる」

と初回の講義で言われた方、野球帽にサングラス、コーヒーを飲んでタバコを吸いながら講義をされた方と、色々ありました。
こちらの大学では考えられないことです。

たとえ日本の大学を卒業しても、これでは国際競争で勝てるはずもなく、日本の大学レベルは世界に比べると相対的に低いということが伺えます。
もちろん東京大学や京都大学など、世界に誇れる優秀な大学があるのは確かですが、
毎年Times Higher Educationが発表する世界大学ランキングを見てみると、日本国内で有名な大学がアデレード大学よりも下と評価されています。
もちろん一つのランキング評価ですし、英語圏が高く評価されるということもあります。
ただ、日本の入試レベルは高く入学が難しいですが、そのレベルに比べると卒業するのは比較的簡単なのではないかと感じます。
またその逆にこちらでは、普通に勉強をして高校を卒業しますと(学部にもよりますが)比較的簡単にアデレード大学に入学できます。
ただ前述のように卒業は大変で、しっかり勉強しないと卒業はできません。

聞いた話では、日本人留学生が海外の大学を卒業するのは1%にも満たないそうです。
昔と違い今では短期留学や交換留学、語学留学など、留学経験をしたことのある日本人学生はたくさんいますが、
高校であっても大学であっても“卒業”をした日本人学生はごくわずかだと思います。
今の若い世代は留学に憧れますが、華やかなものではありません。
留学体験をすることを主に置くのではなく、卒業する、資格を取るということに主眼を置いて欲しいと思います。
日本人としてのアイデンティティーを忘れず、国際社会で生き抜いていける実力を養うという意味での留学であって欲しいと思います。

著者紹介

池田 佳史氏:Sports & Education Projects Australia Pty Ltd 代表
メールアドレス:sepapl@bigpond.com.au

池田 佳史

1972年大阪生まれ。
1991年オーストラリア・アデレードに家族で移住する。
親に頼らず、苦学の末オーストラリアと日本の大学を卒業し、両国の教員免許を取得する。
日本人補習校および現地の教員となるが、日本人留学生の実態を知り、2003年日本人としての誇りを教えるべく人格形成を重視した学習塾を立ち上げる。

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