シンガポールにおける外国人労働者への社会的不満について【野瀬正一氏@シンガポール】

シンガポールにおける外国人労働者への社会的不満について

シンガポールの8月はゴーストマンス(あの世の門が開き、死者の霊魂がこの世に帰ってくる月)ということで比較的静かです。
さて来年1月から就労ビザの取得基準を引き上げるガイドラインが、14日に政府より発表になりました。
今のシンガポールを考えた時、外国人労働者の問題を避けて通る訳にはいきません。

先日、タクシーに乗っているとドライバーが話しかけてきました。
「おう、どこの国の出身だ? 韓国? 中国? 最近は本当に人の数が増えたもんだ。
シンガポールにはオフィスワーカーがたくさんいるだろう? 俺がもしオフィスで働いたらどうなるか。
たいした教育も受けていないし、お前たち外国人もいっぱいいることだから、安い給与でこき使われるだけだ。
しかし、俺達-タクシードライバーの仕事は違う。
オフィスで働く奴は毎日定時に出勤して、いくらもらえるんだ? せいぜいS$3000くらいの給与だろう? 
俺は自分で自分の食いぶちを稼いでるから、休みは少なく勤務時間も長いしそりゃ大変さ。
でも月にS$6000は稼げる。
タクシードライバーはシンガポール人しかなれないし、働いただけ儲けが出るんだ。
頭を使って努力すれば、人より儲けられるのさ」。
ほんの5分くらいタクシーに乗っただけで得たこの会話から、彼のオフィスワーカー(いわゆるホワイトカラー)へのコンプレックスとハングリー精神、そして外国人労働者への不満を感じることができました。

シンガポールにおける外国人に対する不満の大きな要因は、外国からの労働者がローカルの仕事を食ってしまっているというものです。
どの国でも、外国人が来ることによって、その国の労働者の賃金が下がったり、失業が増えるのは社会的な不満となります。
それが選挙にも影響し、5月にあった選挙で与党PAPはかつてない敗北を喫しました(といっても87議席のうち6議席を失っただけですが)。
リー・シェンロン首相をはじめとする政府首脳は、国民の不満をそらすことに懸命にならざるを得ません。就労ビザの取得基準引き上げも、そういった社会的背景の下に行われています。

翻って、シンガポールにおける日本人労働者の賃金は、高いとはいえない状況です。
私のまわりの経営者でも、下手に要求の高いシンガポール人を雇うより日本人を雇った方が、給与の面でも安く済むという意見が増えております。
このような傾向は弊社のような企業にとっては良いことですが、全体としては決して良くありません。
日本の不景気を反映し日本人が安い給与で多く働くようになれば、前述のようなローカルとの雇用の食い合いが頻発するからです。

つまり我々日本人は外国人である以上、ローカルとの圧倒的な差別化が必要と言うことです。
シンガポールではその基本が失われつつあります。
日本が活力を失
っているために、あまり高いモチベーションを持たずとも、こちらに来て仕事をする日本人が増えてきています。
今回のテーマから逸れますのでここでは取り上げませんが、「日本人よ、海外に出よ」と言っても、理想を高く持たない日本人労働者がたくさん外国に来ることは、決して望ましいことではありません。

シンガポールから”NO”を突きつけられないために、自分も含めた日本人はもっとたくさん稼ぎ、現地社会に貢献しないといけない、そう痛感しています。

著者紹介

野瀬 正一氏
WCC SOLUTION PTE. LTD.代表

野瀬正一氏

シンガポール永住権保持者
早稲田大学卒業後、東京で飲食店経営や人材ビジネスなどに携わるも、ことごとく逆風に遭う。
時代の流れには逆らえぬとアジアに出ることを決意し、シンガポールに渡る。
現在はコンサルタントとしてシンガポールへの進出サポートおよび店舗開店支援、また実業としてレンタルオフィスや店舗経営などをおこなっている。
50社ほどのクライアントと日々シンガポールおよびアジアマーケットに挑戦中。

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